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総合法政策研究会誌

 総合法政策研究会誌 第2号 2019年3月28日発行

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目次


【招待論文】

  1. 英国憲法保障における憲法委員会の意義 田中祥貴(桃山学院大学 教授)(1)
    公開日:2019/1/11
  2. 〔要旨〕
        本稿は、英国憲法保障における憲法委員会の意義について論じるものである。現在、英国上院は「憲法の守護者」としての地位を確立している。その憲法保障機能の遂行に際して、極めて重要な役割を果たしているのが、英国上院の憲法委員会である。当該委員会が2001年に創設されてから、すでに18年の歳月が経過した。創設当時は、かかる委員会の制度枠組自体に法的・政治的両面から様々な批判が展開されたが、現在では、これまでの上院改革の中で最大の成功を収めた例として称賛され、英国憲法保障の「支柱」と評価されるまでに至っている。そこで本稿は、かかる憲法委員会の創設背景、権限・機能、権限の射程、構成、審査・調査の仕組み、及び近年の新たな制度展開等への考察を通じて、総合的な制度研究を試みる。そのうえで比較法的視座から、我が国における憲法保障に一定の示唆を得ることを目的とするものである。
  3.   

【研究論文 】

  1. 個人情報の目的外利用と「類型承認」 下村誠(京都府立大学 准教授)(26)
    公開日:2019/3/15
  2. 〔要旨〕
        自治体の現場では、個人情報の目的外利用の必要性が高まっている。しかし、個人情報保護条例の目的外利用に関する規定は自治体によって異なるため、行政活動に支障なく適正に目的外利用ができる自治体もあれば、不自由さを感じている自治体もあるようである。そこで本稿では、まず、京都府内自治体の目的外利用に関する規定を分析したうえで、規定の違いが目的外利用の実務に与える影響を検討した。特に、本稿が言うところの「内部利用例外」と「包括的規定」の有用性および問題点を検討した。
        また、一部の自治体で慣行として行われている「類型承認」について、その正当性を確認したうえで、目的外利用の実務に資するかを検討した。本稿では、類型承認の有用性を認めつつも、恣意的な運用のおそれがあることから、類型の妥当性とその該当性を判断する主体について、これまで自治体で行われてきた運用上の工夫を参考にして、限定的に用いるべきことを指摘した。
  3.   

【研究ノート 】

  1. 能動的市民と政治的リテラシー
    ―シティズンシップ教育の脱政治化をめぐる一考察―
    中村隆志(東海大学 講師)(44)
    公開日:2019/2/7
  2. 〔要旨〕
        本稿は、「能動的市民」の育成に焦点を置いた教育の脱政治化の傾向に対して、民主的な社会を支える市民に不可欠な教養としての「政治的リテラシー」が果たす役割を考察するものである。
        近年注目を集めているシティズンシップ教育においては、特に「アクティブ・シティズンシップ」(活動的・能動的な市民性)が目指されており、市民活動の実践を通じた学びが重視されている。しかし、シティズンシップ教育が地域貢献活動やボランティア活動と結びつくときに、政治主体としての市民に求められる判断力や批判力を培うといった要素が抜け落ちる、という意味での脱政治化が生じる可能性も指摘されている。本稿では、シティズンシップ教育の脱政治化をめぐる議論を踏まえて、能動的市民が身につけるべき政治的リテラシーとはどのようなものであり、なぜそれが必要であるのかを検討する。
  3.   
  1. 二元的民主政理論における市民的権利運動の位置付け
    −WE THE PEOPLE 3: THE CIVIL RIGHTS REVOLUTION (2014)を手がかりとして−
    大江一平(東海大学 准教授)(54)
    公開日:2019/3/20
  2. 〔要旨〕
        本稿では、B・アッカーマンの著書WE THE PEOPLE 3: THE CIVIL RIGHTS REVOLUTION(2014)(以下、「CRR」と表記。)を手がかりとして、二元的民主政理論における市民的権利運動の位置付けについて検討する。アッカーマンは、CRRにおいて、1930年代から60年代にかけて、「我ら合衆国人民」と三権の相互作用による「インフォーマルな憲法改正」によって成立した、1964年市民的権利法に代表される1960年代の画期的法律が現代共和政の憲法規範の一部となっていると主張する。CRRの意義は、大規模な社会運動と憲法の関係に注目し、アメリカ合衆国憲法5条による正式な憲法改正と同等の役割を果たす画期的法律の成立プロセスを考察する点にある。ただし、成熟した現代社会においては、憲法制定・改正に重点を置く人民主権論的な「生ける憲法」論だけでなく、コモン・ロー立憲主義のように、地道な「通常政治」の積み重ねによる変革に注目する必要がある。また、日本においても、憲法の制定・改正・変遷といった憲法の変動を検討していく上で、二元的民主政理論をはじめとするアメリカの「生ける憲法」論は、重要な視座を提供すると考えられる。
  3.   

【編集後記】

  1. 編集後記 小林直三(名古屋市立大学大学院 教授)(68)
    公開日:2019/3/28


著者の所属は発行時のものです。