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文献番号 2020WLJCC013
金沢大学 教授
大友 信秀
1.本件を紹介する理由
本件は、X(原告)が出願した位置商標に対する拒絶査定不服審判に対する審決に対して、Xが取消訴訟を求めた事案である。位置商標としての識別力の証明に何が必要なのか、という一般的な位置商標の問題だけでなく、特許として認められていた技術に関係するデザインが商標として認められるのか、という特殊な問題も提起しており、企業のブランド展開にとって参考になる事案であるため、紹介する。
2.本件
(1) 出願
Xは、第11類「石油ストーブ」を指定商品とする位置商標について商標登録出願をした※2。また、商標の詳細な説明については、当初、「商標登録を受けようとする商標(以下「商標」という。)は、商標を付する位置が特定された位置商標であり、石油ストーブの燃焼部が燃焼する時に、透明な燃焼筒内部の中心領域に上下方向に間隔をあけて浮いた状態で現れる3つの略輪状の炎の虚像からなる。図に示す黒色で示された3つの略輪状の部分が、炎の虚像を示しており、赤色で示された部分は石油ストーブの燃焼部が燃焼していることを示している。なお、青色及び赤色で示した部分※3は、石油ストーブの形状等の一例を示したものであり、商標を構成する要素ではない。」としていたが、後に、指定商品を「対流型石油ストーブ」に、詳細な説明中、「現れる3つの略輪状の炎の虚像からなる。図に示す黒色で示された3つの略輪状の部分が、炎の虚像を示しており、」となっていた部分を「、反射によって現れる3つの略輪状の炎の立体的形状からなる。図に示す黒色で示された3つの略輪状の部分が、反射によって現れた炎の立体的形状を示しており、」と補正した。
(2) 原査定※4
①商標法3条1項柱書きの適用性について
「商標登録を受けようとする商標(中略)は、(中略)3つの略輪状の炎の虚像からなる。」との記載があるが、虚像は、商標法施行規則第4条の6において規定する商標に係る標章(文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合に限る。)にはあたらないため、願書には位置商標である旨の記載があるが、本願商標は位置商標とは認められない。」
②商標法5条5項の適用性について
「本願商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しないが、仮に、本願商標が、位置商標と認められたとしても、本願商標は、商標見本及び商標の詳細な説明の記載から把握されるものであるところ、商標の詳細な説明の記載は、商標登録を受けようとする商標を特定するものでなければならず、そのためには、商標見本に表された標章の構成及び態様と商標の詳細な説明の記載が表す標章の構成及び態様が一致している必要があるところ、商標見本に表された標章は立体的形状を認識させるものであるのに対し、商標の詳細な説明には、「3つの略輪状の炎の虚像からなる。」と記載のみで標章の形状の記載がなく、両者の構成及び態様が一致していないことから、本願商標を特定したものと認めることができない。したがって、本願商標は、商標法第5条第5項の要件を具備しない。」
③商標法3条1項3号適用性について
「出願人は、商標の詳細の説明中の「虚像」を「立体的形状」に補正することで登録されるのであれば、商標の詳細な説明を補正することを検討する旨を主張しているので、仮に「虚像」を「立体的形状」に補正した場合について以下検討する。本願商標は、商標見本及び商標の詳細な説明の記載から特定される商標からなるところ、一般に、商品等の形状は、商品等の機能により相当程度の制約を受けるものであるが、同一の機能を保持しつつも、なお、選択し得る形状に一定の幅があるのが通常である。そして、多くの場合、商品の機能や美感を発揮させるため、又は需要者の注意をひくための装飾等を目的として、出所を表示するための識別標識以外の種々の立体的形状が採用され、それに色彩が付されている実情がある。本願商標は、石油ストーブの燃焼部が燃焼する時に、透明な燃焼筒内部の中心領域に上下方向に間隔をあけて浮いた状態で現れる3つの略輪状の炎の立体的形状からなるところ、本願の指定商品との関係では、石油ストーブの通常採用し得る形態の一部を認識させるものである。そうすると、本願商標を指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、単に商品の美感等を発揮するため又は機能の向上のために採用し得る石油ストーブの燃焼筒内部の一形状を表したにすぎないものと理解するにとどまり、単に商品の形状を普通に用いられる方法で表示するものと判断するのが相当である。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
④商標法3条2項について
「本願商標は、使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っていると認められず、商標法第3条第2項には該当しない。」
(3) 審決※5
①商標法3条1項柱書き及び商標法5条5項該当性について
「本願商標の「商標の詳細な説明」については、…補正された結果※6、本願の願書に記載の「商標登録を受けようとする商標」を具体的に特定しているものと認められる。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項柱書き及び同法第5条第5項の要件を具備するものとなった。」
②商標法3条1項3号該当性について
「…商品等の形状は、多くの場合に、商品等の機能又は美感に資することを目的として採用されるものであり、客観的に見て、そのような目的のために採用されると認められる形状は、特段の事情のない限り、商品等の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として、商標法第3条第1項第3号に該当すると解するのが相当である。また、商品等の具体的形状は、商品等の機能又は美感に資することを目的として採用されるが、一方で、当該商品の用途、性質等に基づく制約の下で、通常は、ある程度の選択の幅があるといえる。しかし、同種の商品等について、機能又は美感上の理由による形状の選択と予測し得る範囲のものであれば、当該形状が特徴を有していたとしても、商品等の機能又は美感に資することを目的とする形状として、商標法第3条第1項第3号に該当するものというべきである。けだし、商品等の機能又は美感に資することを目的とする形状は、同種の商品等に関与する者が当該形状を使用することを欲するものであるから、先に商標出願したことのみを理由として当該形状を特定の者に独占させることは、公益上の観点から適切でないからである。さらに、需要者において予測し得ないような斬新な形状の商品等であったとしても、当該形状が専ら商品等の機能向上の観点から選択されたものであるときには、商標法第4条第1項第18号の趣旨を勘案すれば、同法第3条第1項第3号に該当するというべきである。けだし、商品等が同種の商品等に見られない独特の形状を有する場合に、商品等の機能の観点からは発明ないし考案として、商品等の美感の観点からは意匠として、それぞれ特許法・実用新案法ないし意匠法の定める要件を備えれば、その限りにおいて独占権が付与されることがあり得るが、これらの法の保護の対象になり得る形状について、商標権によって保護を与えることは、商標権は存続期間の更新を繰り返すことにより半永久的に保有することができる点を踏まえると、商品等の形状について、特許法、意匠法等による権利の存続期間を超えて半永久的に特定の者に独占権を認める結果を生じさせることになり、自由競争の不当な制限に当たり公益に反するからである(知財高裁平成19年(行ケ)第10405号、平成20年6月24日判決参照)。」
「上記の観点から、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かを判断する。…Xを権利者とする特許公告公報における…暖房器の内側の燃焼炎の像(形状)は、点線の形で表された4つの像(形状)(以下「特許形状」という。)で示されており、像(形状)の数が異なるが、本願形状とその位置及び形状が近似するものである。また、当該公報の記載からすれば、特許形状は、暖房器の燃焼炎や赤熱体から発する光が、金属被膜による干渉と屈折特性により多重かつ虹状に見ることができるものであって、当該特許の請求範囲に含まれるものである。そして、特許形状は、燃焼炎より発生する光を干渉させて各色に色付いた沢山の燃焼炎や赤熱体の像を形成して燃焼炎や赤熱体から発生する熱線が多方向から届く様になり、暖房効果を高めるものであり、沢山の燃焼炎や赤熱体の像は非常に美しく、視覚的な暖房効果を高め、光の交差による優れたデザイン効果を生むものであるから、商品等の機能又は美感に資することを目的として採用されたものであることは明らかである。そして、本願形状と特許形状とは、それらに含まれる略輪状の炎の立体的形状の数が異なるとしても、機能又は美感上の理由による形状の選択と予測し得る範囲のものであるといえる。しかも、特許形状は、特許請求の範囲に含まれ特許法の定める要件を備え、独占権が付与されたものであるから、上記特許形状と同一性を損なわない本願形状に、商標権によって保護を与えることは、商標権は存続期間の更新を繰り返すことにより半永久的に保有することができる点を踏まえると、商品等の形状について、特許法による権利の存続期間を超えて半永久的に特定の者に独占権を認める結果を生じさせることになり、自由競争の不当な制限に当たり公益に反する。したがって、本願形状は商品等の機能又は美感に資することを目的として採用されたものであって、機能又は美感上の理由による形状の選択と予測し得る範囲のものであり、しかも、特許法の定める要件を備え、独占権が付与されたものであり、商標権によって保護を与えることは、特許法による権利の存続期間を超えて半永久的に特定の者に独占権を認める結果を生じさせることになり、自由競争の不当な制限に当たり公益に反するから、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するというべきである。」
③商標法3条2項に規定する要件を具備するか
通算約30年間、X仕様商品を製造・販売していたことが認められる。「本願形状を当該ストーブの機能や装飾的なものと捉えていること」「本願形状が単独で出所識別標識としての機能を有するものと認識されるとはいえず、本願形状のみによって、Xの出所識別標識として理解されるものということはできない。」「そのシェアの対象を対流石油ストーブのみで評価しなければならない理由はなく、対流型ストーブを含むストーブ全体で評価すれば、市場シェアは著しく低いものと推認できる。」「本願形状部分を特段目立つ様態で表示している等、本願形状を自他商品の識別標識として使用している事実は認められない…」
(4) 取消訴訟
①商標法3条1項3号
「…商品等の形状は、同種の商品が、その機能又は美感上の理由から採用すると予測される範囲を超えた形状である等の特段の事情のない限り、普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として、同号に該当すると解するのが相当である。」
「…本願形状は、美感を向上するために採用された形状であると認められる。また、X…発明は、…視覚的な暖房効果を高め、光の交差による優れたデザイン効果を生むものである…から、本願形状は、暖房効果を高めるという機能を有するものと認められる。」
「そうすると、本願形状は、その機能又は美感上の理由から採用すると予測される範囲を超えているものということはできず、本願形状からなる位置商標である本願商標は、商品等の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標であると認められる。したがって、本願商標は、商標法3条1項3号の商標に該当するというべきである。」
「Xは、本願商標は、物理的な形状ではなく、石油ストーブの部品の形状でもないから、模様に近いものであり、商標法3条1項3号の「商品の形状」には当たらないと主張する。しかし、…本願商標は、三つの略輪状の炎からなる立体的形状の位置商標であることは明らかである。そして、立体的形状は、商標法3条1項3号の「商品の形状」に当たるから、本願商標の立体的形状も同号の「商品の形状」に当たるというべきである。」
②商標法3条2項
「…X使用商品の…販売台数の平均シェアは、対流形石油ストーブの中では約22.5%であるが、自然通気形開放式ストーブ(対流形石油ストーブと反射形石油ストーブ)の中では約2%である。」
「…開放式石油ストーブと半密閉式及び密閉式石油ストーブとの間、自然通気形石油ストーブと強制通気形石油ストーブとの間で需要者は必ずしも同一であるということはできない。もっとも、それらは、いずれもストーブに変わりはないのであるから、需要者が全く異なるとまではいい難い。東日本大震災の発生直後の平成23年度は、自然通気形石油ストーブの出荷台数は前年度の約2倍となったことからすると、自然通気形石油ストーブと強制通気形石油ストーブとは、同一の需要者による需要がある場合もあり得ると認められる。」
「本願形状は、X使用商品を使用していないときは現れないのであるから、店頭で石油ストーブを選び、購入しようとして来店した者は、展示されているX使用商品を見ただけでは本願形状を認識することはできず、このような本願商標の特殊な事情から、需要者が本願商標を認識する機会は限定されるということができる。…」
「以上の事情からすると、本願形状を有する商品であるX使用商品が約30年もの長期間販売されており、OEM商品を除いて本願形状を有する他の商品は存在しないこと、本願形状は、比較的特徴的であるといえること、X使用商品は、グッドデザイン賞を受賞したことを考慮しても、本願商標についてXの事業に係る商品であることを認識することができるとまで認めることはできないというべきである。」
3. 位置商標の活用
(1) 位置商標とはどのような商標か?
位置商標は、商品の特定の位置に標章が付されてそれが出所識別標識として需要者に認識される場合に認められる商標であり、平成26年(2014年)商標法改正により認められた「新しい商標」の一つである※7。位置商標と認められるためには、標章が商品等の特定の位置に付されることで識別力を獲得する必要があり、したがって、標章とそれが付される位置が一体不可分に要部を構成する要素となる※8。
(2) 位置商標の例
すでに位置商標として登録されているものとして、たとえば、日清のカップラーメンの容器の上部と下部に配置された金色の点線※9や亀田製菓のパッケージに付された縦長リボン※10がある。また、海外では、アディダスの肩から手首に伸びる3本線※11やプラダの靴底の赤い縦線12も位置商標として登録されている。なお、靴底の特徴に対する商標の例として、ルブタン(Christian Louboutin)のハイヒールの赤い靴底が有名であり※13、同商標はEUで有効とされているが※14、日本で「色彩のみからなる商標」としてなされた出願は拒絶査定となり、現在不服審判係属中である。
(3) 位置商標を含む新しい商標の活用
注目すべき商標として、トヨタ自動車レクサスの位置商標がある※15。登録商標の図を見ても、すぐにはどの部分が対象なのかわかりづらいが、ヘッドライトの下にあるL字(及び逆L字)部分である。このようなデザインを商標とすることで、モデルチェンジが常に求められる新車市場で、ブランドとしての統一イメージを確保しようとする戦略が現れている。
立体商標、色彩のみからなる商標、位置商標といった商標は、商品そのものを出所を示す標識として使用することができるため、商品のデザイン戦略と密接に連携させることができる。また、商品のみならず、店舗外観や店舗レイアウトにも活用可能なため、商品イメージ全体、さらには、より広いブランド全体のイメージにまで拡張する戦略に活かすことができる。また、商標は、更新により半永久的に使用できるため、特許や意匠のように保護期間が切れることがないため、継続した戦略の遂行を可能にする。
4.本件の具体的争点
(1) 使用時のみ現れるデザインが標章と認められるか
あたらしい商標であるホログラムや音の商標等は、それが現れたときに認識可能であれば標章となり得る。本件の位置商標も燃焼時には視認可能なため、標章となり得る点は問題ない。ただし、燃焼していないときには認識できないため、燃焼場面(燃焼によって本願商標が現れている場面)をどのように需要者に見せるかという商標としての活用場面が問われることにはなるだろう。最も簡単な方法は、燃焼場面の動画もしくは静止画を活用していくことであり、インターネットでの露出が戦略的に検討されるべきだろう(この点は、商標法3条2項とも関係する)。
(2) 特許対象となっていた技術に関係するデザインが商標と認められるか
本願商標は立体形状を対象とするため、その形状が特許対象となっている場合に、特許保護期間終了後にも、商標による独占を認めることが適当かという点が問題となった。審決では、商標法4条1項18号の趣旨(出願商標が、商品等の機能を確保するために不可欠な立体的形状のみからなるものであること。)に照らし、また、判決では、特許公報にある暖房効果を高めるという機能から採用される形状の予想範囲を超えているものということはできないことを理由に、同法3条1項3号(商品等の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標)に該当するとされた。
本願商標は、Xのホームページの画像を見る限り※16、十分に特徴的であるため、本願商標の形状がX特許から必然的に確定するものではないこと(3つの略輪状の形状以外にもX特許を利用した立体形状が形成可能なこと)を示すことができれば、商標法3条1項3号該当性を否定できたのではないだろうか。
(3) 商標法3条2項の証明に必要なものは
①装飾的なものではだめなのか?
判決は、「単に、本願形状を当該ストーブの機能や装飾的なものと捉えていること、…本願形状が単独で出所識別標識としての機能を有するものと認識されるとはいえず、本願形状のみによって、請求人の出所識別標識として理解されるものということはできない。」とした。このことは、位置商標が装飾的な形状であってはならないということではなく、単なる装飾としての認識に留まり、出所を表示する標識として認識される段階に至っていないことを意味しているため、Xには、さらなる立証が必要であったと評価できる。たとえば、単に、デザインとしての美しさに関する評価にとどまらず、競合製品等との比較で、本願商標が圧倒的な存在感を示している等の需要者による評価も必要であったものと思われる。
②自他識別力獲得の有無を把握するための市場をどのように特定するか
審決及び判決は、本願商標が自他識別力を発揮すべき需要者として、対流石油ストーブの需要者に限定せず、ストーブ全体の需要者とした。これにより、Xの市場シェアは著しく低いものとされ、このことが、本願商標の使用による自他識別力獲得の有無に影響を与えたものと考えられる。
③位置商標の対象である標章のみを目立つ態様で表示する必要があるか?
審決は、「本願形状部分を特段目立つ様態で表示している等、本願形状を自他商品の識別標識として使用している事実は認められない」とした。確かに、X商品の販売時における本願形状部分の表示すべてを対象にすれば、審決のような結論にもなり得る。しかしながら、X商品の使用時(燃焼時)には、本願形状部分が最も目立つ部分となることは簡単に想像できるため、このような使用時との関係での本願形状部分の識別力とXの本願商標を使用した商品の販売全体での識別力に関する証拠も必要とされたものと思われる。
5.トヨトミ・レインボーの挑戦
Xは、燃焼する炎の反射が形成する形状を対象とする商標、特許と関係する部分を標章とする商標、自他商品識別力の獲得のための市場特定等、今後の多くの企業に参考となる多くの論点について具体的な指針を示すことに貢献した。
位置商標は、必ずしも立体商標のように、使用による著名性(識別力)の獲得を必要としない。しかし、その場合、標章と位置による総合的な識別力を示すことが必要になる。Xの本願商標は、ストーブ中央の燃焼室の位置と炎という、位置についても標章についてもその特徴を示しづらいものともいえる組み合わせが対象となっている。しかし、ストーブの場合、使用時に最も人の目を惹くのは燃焼部分(外部から視認可能であれば)であるため、標章の特徴次第では、逆に識別力を示しやすくなる可能性も有する。
本願商標の登録に必要な商標法3条2項の証明については、今後も十分に可能であるため、Xのブランド戦略とトヨトミ・レインボーの商品ラインナップの拡大が引き続き注目される。
(掲載日 2020年4月27日)