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第105回 iPadのインパクト

成城大学法学部資料室
隈本 守

この4月アメリカでアップルコンピュータからiPadが発売された。アップルが作ったピュア・タブレット・パソコンとも、Amazonのキンドルのような電子ブックリーダ、インターネットを利用するためのツール、あるいは大型の携帯情報端末(PDA)、などと言われるものである。当初日本でも4月中の発売予定とされていたのだが、アメリカでの受注が多く、生産が追いつかず発売が5月末に延期されたほどのヒット商品であり、雑誌、新聞でも電子ブックリーダとの比較記事などで多数取りあげられている。

これまでもタブレットPCとしては、マイクロソフトOSのピュアタブレットとコンパーティブルタブレット――キーボードがあるノートパソコンと、画面を180度回転させて閉じるとピュアタブレットとしても利用できる――の2種類が多数発表されている。しかし、携帯利用に優れ起動も早く手軽に使えるiPadと比べると、ワードやパワーポイントが使えるものの、その起動の遅さ、持ち歩くには重いというイメージから、講演やプレゼンテーションで手に持って利用したり、ノート、電子ブックリーダとして使ったりするにはまだ改善が必要と考えられていた。そのためか雑誌などのメディアでは今回のiPadを、ビジネス利用の期待を担うもの、として取りあげているものも多い。

ビジネスの中でも、特にここでは私たちの仕事の観点から見てみたい。法律関係の仕事では、書類、本、講演、ネット、メール、DBなどで様々な情報を収集し、メモ、ノート、文章などを書いて情報の整理、処理をする。またこれを口頭や論文等の文章、そして時にはパワーポイントを使って発表、説明する。このなかで、ノートパソコンでも手書きと同じようにノートをとりたいと思うことや、冊子体の資料を持ち歩くときに、これがPDFになっていればと感じることがある。パワーポイントを使う際にも、黒板に手書きで法律上の関係を図入りで説明するように利用できれば、と思う方も多いのではなかろうか。このような希望にはタブレットPCを利用すれば応えられるかもしれないが、これがまだノートや本、黒板のように使いやすいものにはなっていない。これらのことが、軽くて十分な機能?をもつiPadや、下の写真のような読み書きしやすい2画面タイプのタブレットPC※1などの「気軽に直感的に使えそうなもの」への関心となり、ニーズとなってくるように思えるところである。

これまでのアップルコンピュータの歴史から見てもiPadの衝撃的なヒットに刺激され、他社のタブレットPCがパソコンとしての機能を生かしつつ、さらに進化することは不自然とはいえない。そして、その進化の先に期待するものは“仕事で利用する様々な機能を備えた上で、読む画面と書く画面などの2画面を装備し、これをペン、指などにより直感的に入力・操作できるもので、かつ外で長時間手に持って使える薄くて軽い製品の選択肢が増えること”ではなかろうか。

タブレットPC

iPadがこのきっかけになるのではと思いつつ、そのウィンドウズ版ともいわれるHP社のSlate PC※2、さらにその先、を楽しみにしているものである。

(掲載日 2010年5月17日)

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