ウエストロー・ジャパン
閉じる
判例コラム

便利なオンライン契約
人気オプションを集めたオンライン・ショップ専用商品満載 ECサイトはこちら

判例コラム

 

第238号 証拠能力の認定方法-証拠の収集手続の違法性の重大性 

~最三小判令和3年7月30日-覚醒剤取締法違反、大麻取締法違反、 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律違反被告事件※1

文献番号 2021WLJCC017
東京都立大学 客員教授
前田 雅英

Ⅰ 判例のポイント

 本件第1審(東京地判令2・3・17・WestlawJapan文献番号2020WLJPCA03176012)は、大麻所持の事案に関し懲役2年の実刑を言い渡した、よく見られる「薬物事犯」のように見える。ただ、公訴事実の内、覚醒剤の所持と使用については、それを立証する、「被告人の尿の鑑定書、違法薬物及びその鑑定書」について証拠調べ請求を却下され、無罪とされていたのである。これに対し検察官が控訴し、東京高裁(東京高判令2・11・12・WestlawJapan文献番号2020WLJPCA11126010)が、鑑定書などの証拠能力の判断には明らかな法令違反があるとして、第1審判決を破棄して注目を集めた。これに対して、今回最高裁は、弁護側の上告を容れ、東京高裁に差し戻した。
 争点は、覚醒剤に関連する「被告人の尿の鑑定書」が、違法収集証拠に当たるか否かにある。警察官は、職務質問に際し運転免許証の提示に応じた被告人に、覚醒剤取締法違反の犯罪歴が多数あることなどが判明したので、所持品検査等に応じるよう説得し、任意の採尿や所持品検査も求めたが応じなかったところ、捜査機関は、本件車両の運転席ドアポケットに、覚醒剤を容れることにも使うチャック付きビニール袋の束があることを確認した旨記載された取扱状況報告書やドアポケットに本件ビニール袋がある状況を撮影した写真が添付された写真撮影報告書を疎明資料として、覚醒剤の所持及び自己使用の各被疑事実により、本件車両等に対する捜索差押許可状及び被告人の尿を採取するための捜索差押許可状を請求した。そして、本件車両等に対する捜索差押許可状に基づき捜索差押えに着手し、覚醒剤を発見して被告人を覚醒剤所持の現行犯人として逮捕し、逮捕に伴う捜索差押えも実施し、これらの手続により本件車両から発見した本件薬物を差し押さえたところ、警察署に引致された被告人は、強制採尿令状が出ている旨を告げられて、自ら採取した尿を任意提出し、覚醒剤の陽性反応が出たという事案である。
 ただ、第1審裁判所は、本件ビニール袋が本件車両内にはもともとなかったものであるとの疑いが払拭できないとし、警察官が、本件ビニール袋は本件車両内にもともとなかったにもかかわらず、これがあることが確認された旨の疎明資料を作成して本件車両に対する捜索差押許可状及び強制採尿令状を請求した事実があったというべきであり、本件薬物並びに本件薬物及び被告人の尿に関する各鑑定書の収集手続には重大な違法がある旨の判断を示した上、本件各証拠の証拠能力を否定したのである。

Ⅱ 事実の概要

  1.  最高裁は、第1審判決が無罪とした覚醒剤の自己使用及び覚醒剤等(以下「本件薬物」という。)の所持の各公訴事実に関する捜査経過の概要を、原判決及び第1審裁判所の令和2年1月15日付け決定を基に、以下のようにまとめている。
     平成30年3月30日午後4時41分頃、警察官は、職務質問を行うため、自動車(以下「本件車両」という。)を運転中の被告人に対して停止を求め、本件車両は道路左端(以下、同所及びその付近を「本件現場」という。)に停止した。警察官は、本件車両の運転席ドアを開け、被告人に対し、運転免許証の提示に応じるよう説得した。
     警察官は、同日午後4時48分頃、本件車両の運転席ドアポケットに、中身の入っていないチャック付きビニール袋の束(以下「本件ビニール袋」という。)がある旨を被告人に告げた。
     その後、運転免許証の提示に応じた被告人に覚醒剤取締法違反の犯罪歴が多数あることなどが判明し、被告人が任意の採尿や所持品検査に応じなかったことから、警察官は、同日午後5時8分頃、令状請求の準備に取り掛かることとした。
     警察官は、同日午後7時頃、覚醒剤の所持及び自己使用の各被疑事実により、本件車両等に対する捜索差押許可状及び被告人の尿を採取するための捜索差押許可状(以下「強制採尿令状」という。)を請求した。その際の疎明資料には、本件車両の運転席ドアポケットに本件ビニール袋が入っていることを確認した旨記載された取扱状況報告書、同ドアポケットに本件ビニール袋がある状況を撮影した写真が添付された写真撮影報告書が含まれていた。警察官は、同日午後11時4分頃、上記各令状の発付を受け、本件現場に向かった。
     一方、本件現場では、警察官が、本件車両を取り囲み、引き続き被告人に所持品検査等に応じるよう説得していた。被告人は、再三にわたり、警察官に対して帰りたい旨の意思やそのために本件車両のドアや窓を閉めさせてほしいことを伝え、その後、弁護士の助言を求めて電話をかけたり、帰りたい旨述べて本件現場を立ち去ろうとしたりしたが、警察官は、被告人を取り囲み、被告人の動きに応じてその身体に接触するなどして立ち去りを制止した。
     警察官は、同日午後11時25分頃、本件車両等に対する捜索差押許可状に基づき捜索差押えに着手し、覚醒剤を発見して被告人を覚醒剤所持の現行犯人として逮捕し、逮捕に伴う捜索差押えも実施し、これらの手続により本件車両から発見した本件薬物を差し押さえた。
     被告人は、警察署に引致され、同月31日午前4時42分頃まで断続的に取調べを受ける中で、警察官から、強制採尿令状が出ている旨を告げられて、同日午前4時48分頃、自ら採取した尿を任意提出した。
  2.  このような事実に対し、第1審裁判所は、本件ビニール袋が本件車両内にはもともとなかったものであるとの疑いは払拭できないから、警察官が、本件ビニール袋は本件車両内にもともとなかったにもかかわらず、これがあることが確認された旨の疎明資料を作成して本件車両に対する捜索差押許可状及び強制採尿令状を請求した事実(以下「本件事実」という。)があったというべきであり、本件薬物並びに本件薬物及び被告人の尿に関する各鑑定書(以下、併せて「本件各証拠」という。)の収集手続には重大な違法がある旨の判断を示した上、本件各証拠の証拠能力を否定した。
  3.  これに対し、原判決は、本件各証拠の証拠能力を否定した第1審裁判所の判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反がある旨の検察官の控訴趣意を容れ、第1審判決を破棄し、本件を東京地裁に差し戻した。その理由の要旨は、次のとおりである。
     本件ビニール袋がもともと本件車両内にはなかったものであるとの疑いを拭い去ることはできないが、その疑いはそれほど濃厚ではないところ、その程度にとどまる事情だけを根拠に本件各証拠の証拠能力を否定しても、将来における違法行為抑止の実効性を担保し得るか疑問があるから、この事情をもってしても、本件各証拠を証拠として許容することが将来における違法な捜査の抑制の見地からして相当でないとまではいえない。
     捜索差押許可状等の請求に至るまでの手続については、本件ビニール袋の発見経緯に前記の疑いが残るという以外には、違法はなかった。その後、捜索差押許可状を執行するまでの間被告人を本件現場に留め置いた措置自体は、違法であったというべきであるが、その違法は重大なものとはいえない。
     これらの事情と、本件ビニール袋がもともと本件車両内になかったものであるとの疑いが残ることについての前記の法的な評価を併せても、本件車両の捜索差押えが違法な留め置きの結果を利用したものであることを理由として、本件薬物及び本件薬物に関する鑑定書の証拠能力を否定すべきとまではいえない。被告人による尿の任意提出手続自体に問題はなく、本件ビニール袋が本件車両内になかったとの疑いが残る点について前記のように考えられる以上、被告人の尿に関する鑑定書についても証拠排除すべき理由はない。

Ⅲ 判旨

 弁護側の上告を容れ、原判決は是認することは出来ないとして破棄し、東京高裁に差し戻した。
 「証拠物の押収等の手続に令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、これを証拠として許容することが、将来における違法な捜査の抑制の見地からして相当でないと認められる場合においては、その証拠能力は否定されるものと解すべきである」(最判昭53・9・7刑集32・6・1672・WestlawJapan文献番号1978WLJPCA09071005参照)。
 前記Ⅱ1「の事実経過の下においては、本件各証拠の証拠能力を判断するためには、本件事実の存否を確定し、これを前提に本件各証拠の収集手続に重大な違法があるかどうかを判断する必要があるというべきである。しかるに、原判決は、本件ビニール袋がもともと本件車両内にはなかった疑いは残るとしつつ、その疑いがそれほど濃厚ではないなどと判示するのみであって、本件事実の存否を確定し、これを前提に本件各証拠の収集手続に重大な違法があるかどうかを判断したものと解することはできない。本件各証拠の証拠能力の判断において本件事実の持つ重要性に鑑みると、原判決には判決に影響を及ぼすべき法令の解釈適用の誤りがあり、これを破棄しなければ著しく正義に反すると認められる。」

Ⅳ コメント

  1.  違法収集証拠の排除基準については、端的に手続の違法の有無のみを基準とする絶対的排除説といわれる説もみられるが、学説上も、司法に対する国民の信頼の確保の観点と違法捜査の抑止の観点から採証手続の違法性の程度や抑止効果等を総合的に考慮して判断する(相対的排除説)。具体的には、手続違反の程度・状況・有意性・頻発性、手続違反と証拠獲得との因果性の程度、証拠の重要性、さらに事件の重大性等についての総合的判断なのである(池田修・前田雅英『刑事訴訟法講義〔第6版〕』487頁(東京大学出版会、2018年))。判例も、そのような総合的考慮を踏まえて、「令状主義の精神を没却するような重大な違法」があり、「将来における違法な捜査の抑制の見地から相当でない」と認められる場合に排除すべきものとする(最判昭53・9・7刑集32・6・1672・WestlawJapan文献番号1978WLJPCA09071005)。
  2.  最高裁は、当初、「押収物は押収手続が違法であっても物其自体の性質、形状に変異を来す筈がないから其形状等に関する証拠たる価値に変りはない」として(最判昭24・12・13裁判集刑事15・349・WestlawJapan文献番号1949WLJPCA12130008)、排除法則に消極的であった。しかし、最判昭53・9・7(刑集32・6・1672・WestlawJapan文献番号1978WLJPCA09071005)が違法収集証拠排除の原則を認めるに至った。ただ、判例は、「真実発見の視点」を無視しているわけではないことにも、留意する必要がある。「覚醒剤を現に所持しているのに、『所持罪は成立しない』」とするには、捜査の悪辣性や違法捜査が繰り返される可能性等、重大な違法性が具体的に示される必要がある。
  3.  判例における「捜査の違法性の重大性」と「違法捜査の抑制の見地」との関係については、例外的な場合(将来用いられそうもない違法捜査等)を除き、重大な違法があれば違法捜査抑制の見地からも排除を相当とするのが通例であるため、実際の訴訟においては、重大な違法といえるか否かの判断が証拠を排除するか否かの結論に直結することが多いといえよう。ただ、本件でも問題となった「客観的事実と異なる疎明資料を作成して捜索差押許可状の請求」の存否のような場合には、令状主義潜脱の意図が顕著であり、違法捜査の抑制の見地が、より正面に出てくる。
  4.  証拠を排除すべき程に違法性が重大であるかは、でも触れたように、違法収集証拠を用いることにより、被疑者・被告人の人権を侵害し、刑事司法システムの公正さや正義を疑わせるおそれの程度と、その証拠を排除することにより、真実発見の利益を放棄し、刑事司法システムの運用コストを増大させる程度との比較衡量であり、具体的には、①違反した法規の重大性、②違反の態様の悪辣性、③被告人の利益を直接侵害した程度、④捜査官の法軽視の態度の強弱、⑤当該捜査方法が将来繰り返される確率、⑥当該事案の重大性とその証拠構造における当該証拠の重要性、⑦手続の違法と証拠収集との因果性の程度などが考慮されなければならない。
  5.  この点に関する最高裁の判例は、覚せい剤事犯に関するものに集中している。そして、それらの多くのものにおいては、捜査手続に違法があるとしながらも、重大な違法とは認めず、証拠能力を肯定してきたことに注意しなければならない※2。ただ、証拠を排除した最高裁判例もある。最判平15・2・14(刑集57・2・121・WestlawJapan文献番号2003WLJPCA02140001)は、被疑者の逮捕手続には、逮捕状の呈示がなく、逮捕状の緊急執行もされていない違法があり、これを糊塗するため、警察官が逮捕状に虚偽事項を記入し、公判廷において事実と反する証言をするなどの経緯全体に表れた警察官の態度を総合的に考慮すれば、本件逮捕手続の違法の程度は、令状主義の精神を没却するような重大なものであり、本件逮捕の当日に採取された被疑者の尿に関する鑑定書の証拠能力は否定されるとした。ここでは、警察官の「法を蹂躙する態度」を重視して、逮捕手続の違法の程度は令状主義の精神を没却するような重大なものであり、令状主義潜脱の意図が顕著であったとされた。本件でも、違法捜査抑止の必要性が高まることになると考えられるのである。
  6.  その意味で、本判決が「本件事実(本件空パケが事後に持ち込まれたものでないこと)の存否を確定すること」を重視することは、首肯し得るものではある。最高裁は、判示の最後に「本件各証拠の証拠能力の判断において本件事実の持つ重要性」を強調している。
     しかし、「本件空パケが事後に持ち込まれたものでないこと」が完全に立証されない限り、違法収集証拠として排除すべきであるとするのであれば、疑問が残る。これまでの判例は、司法に対する国民の信頼の確保の観点と違法捜査の抑止の観点から「採証手続の違法性の程度や抑止効果等を総合的に考慮して」判断してきたのである。
     原判決が、本件ビニール袋がもともと本件車両内にはなかった疑いは残るとしつつ、その疑いがそれほど濃厚ではないなどと判示するのみで、「事実の存否」を確定せず、これを前提に本件各証拠の収集手続に重大な違法があるかどうかを判断したことは違法だとする最高裁の判旨は、ごく自然なものと見えるが、この趣旨が、「警察官が後から空パケを車内に置いた」という事実を完全に否定する立証が出来ない限り、他にどのような事情があろうとも、本件鑑定書は証拠能力を欠くとするのであれば、妥当ではない※3。前述の最判平15・2・14では、逮捕手続に逮捕状の呈示がなく、これを糊塗するための逮捕状への虚偽事項の記入も明確に認定されていたのである。
  7.  「犯罪事実の立証責任」が検察官にあるということは、いうまでもないことであるが、違法収集証拠の判断においては、捜査手段の違法性の強弱という「量的判断」も必須の要素である。たしかに、「警察官が本件空パケを車内に置いたか否か」は、量的な判断ではなく、「あるかないか」の判断に見える。もとより、「犯罪の成否」の判断においては、事実の有無が合理的な疑いを容れない程度に立証されなければならない。しかし、違法収集証拠排除という「その他の面では証拠能力を有する又は有し得る証拠について、将来における違法な捜査の抑制といういわば法政策的な見地に立って排除することが要請されるような状況」(本件補足意見から引用)の有無の判断においては、「事実があった疑いの程度」を考慮しなければ、妥当な結論は導き得ない。さらに、刑事手続の中で行われる判断には、その段階において、例えば「嫌疑の程度」のような「量的評価」が不可避のものがあり、それが裁判時に至っても「捜査の違法性の有無」を左右するのである。
     違法収集証拠排除の判断の局面において、「警察官が後から空パケを車内に置いた」との被告人の主張が、合理的な疑いを容れない程度に否定されない限りで、薬物反応の鑑定書の証拠能力が否定されてよいとはいえない。「違法薬物ではないと思っていた」と言い張れば薬物輸入の故意が否定されるわけではないのと類似して、証拠に基づく「主張の評価」が必要なのである。そして、しかも証拠能力判断においては、「他の事情との総合衡量」の素材となるのである。
  8.  本件において、「ビニール袋が車両内になかった疑い」が生じる根拠となる主要なものは、①A巡査部長が運転席ドアポケットの方に向き、手を伸ばしているように見えるドライブレコーダーの画像の存在と、②空パケを押収しなかったという事実であるといってよい。
     これに対し、原審東京高裁は、①映像の解像度の限界から、第1審却下決定のように「Aが自らのズボン右後ろポケットに手を入れた」とまで読み取ることは困難であり、②空パケの証拠としての重要性は低く、差押えの必要性は小さかったので、差押えを失念することもあり得るとも考えられるとした※4
     その上で、③本件空パケがもともと本件車両内にはなかったとすれば、Aが空パケの束をあらかじめ用意していたこととなるが、Aが薬物犯罪の捜査に特化して警ら活動を行っていたわけではなく、④本件空パケの形状・保管状態は、被告人の所持していた別の空パケに酷似しており、⑤Aが空パケを車内に置いたとすると、職務質問が開始されて僅か6分後で、未だ説得が奏功する可能性が十分にあるのに多大なリスクを伴う行為に及ぶのは不合理で、⑥周囲に他の警察官がおり、ドライブレコーダーにより録画されている中で違法行為に及ぶのは不合理であるという事情を挙げて※5、「これらの事情を総合すると、本件空パケがもともと本件車両内にはなかったという疑いは相当程度弱まるものといえる。」としたのである。
  9. を踏まえ原審東京高裁は、鑑定書の証拠能力に関し、「本件においては、・・・本件空パケがもともと本件車両内にはなかったものであったとの疑いを拭い去ることはできないが、その疑いはそれほど濃厚ではないところ、その程度にとどまる事情だけを根拠に薬物等の証拠能力を否定しても、将来における違法行為抑止の実効性を担保し得るかどうかには疑問があり、したがって、この事情をもってしても、薬物等の証拠能力を許容することが将来における違法な捜査の抑制の見地からして相当でないとまではいえないというべきである」と結論づけたのである。
  10. 10 注3に引用したように、補足意見は、「事実があった疑いの程度」を考慮すると、当事者にとって立証命題が明確であるとはいえず、審理が複雑で不安定なものになる危険があるとする。たしかに、「程度」を含む判断は「有無」の判断より曖昧ではあるが、刑事裁判においては、このような「不安定性」は、ある意味で、不可避なのである。たしかに、原審判示の表現にはややわかりにくい部分も含まれるが、で見た①~⑥の原審東京高裁の評価を踏まえると、「証拠能力を有する(有し得る)証拠を、将来における違法な捜査の抑制という見地から政策的に排除すべきとまではいえない」という結論は、十分に説得性を有するように思われる。
  11. 11 本判決は、東京高裁に差し戻された。もとより、「事実」の問題についての判断・認定は法律家の専権であり、差し戻された東京高裁にその評価は委ねられる。研究者の視点には限界がある。差戻審には、本件最高裁の判示を踏まえつつ、従来の違法収集証拠判例の流れを踏まえた慎重な審理と、説得性のある判示を期待したい。

(掲載日 2021年8月19日)

» 判例コラムアーカイブ一覧