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文献番号 2021WLJCC017
東京都立大学 客員教授
前田 雅英
Ⅰ 判例のポイント
本件第1審(東京地判令2・3・17・WestlawJapan文献番号2020WLJPCA03176012)は、大麻所持の事案に関し懲役2年の実刑を言い渡した、よく見られる「薬物事犯」のように見える。ただ、公訴事実の内、覚醒剤の所持と使用については、それを立証する、「被告人の尿の鑑定書、違法薬物及びその鑑定書」について証拠調べ請求を却下され、無罪とされていたのである。これに対し検察官が控訴し、東京高裁(東京高判令2・11・12・WestlawJapan文献番号2020WLJPCA11126010)が、鑑定書などの証拠能力の判断には明らかな法令違反があるとして、第1審判決を破棄して注目を集めた。これに対して、今回最高裁は、弁護側の上告を容れ、東京高裁に差し戻した。
争点は、覚醒剤に関連する「被告人の尿の鑑定書」が、違法収集証拠に当たるか否かにある。警察官は、職務質問に際し運転免許証の提示に応じた被告人に、覚醒剤取締法違反の犯罪歴が多数あることなどが判明したので、所持品検査等に応じるよう説得し、任意の採尿や所持品検査も求めたが応じなかったところ、捜査機関は、本件車両の運転席ドアポケットに、覚醒剤を容れることにも使うチャック付きビニール袋の束があることを確認した旨記載された取扱状況報告書やドアポケットに本件ビニール袋がある状況を撮影した写真が添付された写真撮影報告書を疎明資料として、覚醒剤の所持及び自己使用の各被疑事実により、本件車両等に対する捜索差押許可状及び被告人の尿を採取するための捜索差押許可状を請求した。そして、本件車両等に対する捜索差押許可状に基づき捜索差押えに着手し、覚醒剤を発見して被告人を覚醒剤所持の現行犯人として逮捕し、逮捕に伴う捜索差押えも実施し、これらの手続により本件車両から発見した本件薬物を差し押さえたところ、警察署に引致された被告人は、強制採尿令状が出ている旨を告げられて、自ら採取した尿を任意提出し、覚醒剤の陽性反応が出たという事案である。
ただ、第1審裁判所は、本件ビニール袋が本件車両内にはもともとなかったものであるとの疑いが払拭できないとし、警察官が、本件ビニール袋は本件車両内にもともとなかったにもかかわらず、これがあることが確認された旨の疎明資料を作成して本件車両に対する捜索差押許可状及び強制採尿令状を請求した事実があったというべきであり、本件薬物並びに本件薬物及び被告人の尿に関する各鑑定書の収集手続には重大な違法がある旨の判断を示した上、本件各証拠の証拠能力を否定したのである。
Ⅱ 事実の概要
Ⅲ 判旨
弁護側の上告を容れ、原判決は是認することは出来ないとして破棄し、東京高裁に差し戻した。
「証拠物の押収等の手続に令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、これを証拠として許容することが、将来における違法な捜査の抑制の見地からして相当でないと認められる場合においては、その証拠能力は否定されるものと解すべきである」(最判昭53・9・7刑集32・6・1672・WestlawJapan文献番号1978WLJPCA09071005参照)。
前記Ⅱ1「の事実経過の下においては、本件各証拠の証拠能力を判断するためには、本件事実の存否を確定し、これを前提に本件各証拠の収集手続に重大な違法があるかどうかを判断する必要があるというべきである。しかるに、原判決は、本件ビニール袋がもともと本件車両内にはなかった疑いは残るとしつつ、その疑いがそれほど濃厚ではないなどと判示するのみであって、本件事実の存否を確定し、これを前提に本件各証拠の収集手続に重大な違法があるかどうかを判断したものと解することはできない。本件各証拠の証拠能力の判断において本件事実の持つ重要性に鑑みると、原判決には判決に影響を及ぼすべき法令の解釈適用の誤りがあり、これを破棄しなければ著しく正義に反すると認められる。」
Ⅳ コメント
(掲載日 2021年8月19日)