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高島国際特許事務所※1
所長・弁理士 高島 一
合格率が2%程度であった弁理士試験の合格率は最近飛躍的に上昇し、6.5~7%程度にまで至っている。政策的に弁理士の数を増やすことを目的としているため、合格させるための試験となっているのである。100年以上も続く弁理士制度であるが、その半数以上が2000年以後に合格した者である。弁理士全体の資質が問題視されていることは否めない。
知的財産は、企業にとって極めて資産価値の高いものであるばかりでなく、わが国が国際競争に打ち勝つための、極めて重要な国家的財産である。従って、弁理士は、この財産を守り、育てるための資質を有することが求められ、さらにまた、国際競争の熾烈な分野においては、価値ある的確な特許網を国際的に張りめぐらせることが重要である。これらを達成する為に弁理士は大きな役割を負わされているはずである。かかる役割を全うし得てこそ真の弁理士と言えるのであり、弁理士は日本の特許制度は勿論のこと、海外の特許制度にも精通していることが要求されるであろう。数を増やすことのみでは返って国益を損ねることになりかねない。
特に、ライフサイエンス分野は、国際競争が顕著な分野であり、国家的に重要な分野である。従って、他分野以上に国際的な特許戦略を構築する必要があり、この分野を扱う弁理士は、特に外国特許制度に精通する必要がある。
ところで、再生医療、遺伝子治療などを適用する「治療方法」が、日本においては「産業上利用することが出来ない発明」ということで特許されないのである。このことに起因して「治療方法」の特許に対する弁理士のマインドが必ずしも十分ではないことに留意すべきである。例えば、治療方法の発明について、日本に特許出願をしなかったことに連動して、「治療方法」に特許を付与するアメリカにも特許出願しなかったという例を聞いたことがある。ところが、この分野はアメリカで特許権を取得することが、極めて重要であり、アメリカでの特許権取得を中心に特許戦略を構築すべきであろう。弁理士には、このように実情を踏まえた戦略を構築できる素養が要求されると考えている。
なお、国際競争に打ち勝つためには、日本も「治療方法」を特許するよう運用を変えていくべきであろう。これによってこの分野の研究が促進され、我国の技術の進歩が促進されるものと思われる。さらに、弁理士の治療方法特許に対するマインドも上昇し、より的確な業務を遂行することが出来、国益に資することになるであろう。