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判例コラム
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第16回 知的財産権の専門知識を向上させる必要性

マックスプランク知的財産法・競争法・税法研究所(ミュンヘン)
博士 ペーター・ガネア

知的財産権の世界的重要性が高まっている。グローバル・マーケットに流通されている製品の大部分は知的財産法によって保護されているイノベーション、創作性、品質向上の成果が盛り込まれているものである。ジョイント・ベンチャー、直接投資の場合に取引されている無形アセットの量も多くなった。ところが、多くの国では、その知的財産権の構成上、グローバル化への迅速な対応が難しい。それは発展途上国だけの問題ではなく、多くの先進国にも当てはまる。その理由のひとつは、裁判官、弁護士、政治家および企業経営者が国内の法状況に過度に注目し、外国の知的財産権の特徴や国際的な知的財産権の発展に関する知識が乏しいことである。このような背景のもと、弁護士が外国で知的財産訴訟に挑むための知識や、経営者が外国に投資する際の、無形アセットのロスに対するリスク・アセスメントのために必要な知識を提供する専門教育へのニーズが高まった。

このようなニーズに対応するために、マックスプランク知的財産法・競争法・税法研究所(ミュンヘン)、アウグスブルグ大学、ミュンヘン工科大学と米国のジョージ・ワシントン大学のロースクールは、2003年にミュンヘン知的財産法センター(Munich Intellectual Property Law Center (MIPLC)- www.miplc.de)を設立した。MIPLCの一年間のLL.M.プログラムは、知的財産のすべての分野、すなわち、ハードコアの知的財産権法(特許法、商標法、著作権法)のほかに、独禁法、エンターテインメント法その他隣接する法分野および関係する経営学や経済学の分野(スタートアップ企業の結成、イノベーション政策、知財プロジェクトマネジメント等)をカバーしている。欧米の知的財産制度以外、日本を含む他の重要な国々の知的財産権制度、国際条約の構成および発展途上国の特殊な状況も紹介されている。講師陣は、アメリカ、ヨーロッパと日本からの約70名の国際的著名な学者、裁判官、弁護士、弁理士等々から構成されている。すべてのコースは英語によるもので、ドイツ語を勉強する必要がない。それ以上に、MIPLCが位置するミュンヘン市は非常に国際的で、ドイツ語が分からなくても毎日の生活に困らないまちである。

MIPLCの学生のバックグラウンドと国籍は、プログラムの内容と同じく、実に多彩である。アメリカ、南米、アフリカ、ヨーロッパ、アジアから来ている学生のバックグラウンドは法学に限られておらず、科学、経済学、ITの専門家も含まれている。さまざまなバックグラウンドに対してのオープンネスは、知的財産権はもはや法律専門家の遊び場ではなく、学者、メディアの専門家、企業経営者も知る必要がある分野である、という信念に基づくものである。

(掲載日 2008年6月30日)

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