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判例コラム
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第20回 イノベーション創成センター

金沢大学法学類教授
同イノベーション創成センター将来開拓部門長
大友 信秀

前回はごぼうの話をしました。ごぼうという、法学部とは直接結びつかない問題に関わるようになったいきさつは前回(2008年4月28日掲載)でご理解いただけたと思います。すでに気がついた方もいらっしゃると思いますが、私の仕事のひとつに、イノベーション創成センターの部門長という、法学部とは結びつけにくいものがあります。

イノベーション創成センターは、本年4月に発足した組織で、従来、知的財産本部、共同研究センター、ベンチャー・ビジネス・ラボラトリーと呼ばれていた組織等を統合、発展させたものです。同様の組織改編は全国的に見られますが、金沢大学のユニークな点は、この組織改編の際に、既存組織に加え、将来開拓部門というものを設置したところにあります。

イノベーション創成センターの業務を拡大する際に、これまで主に学内の理系の研究者と学外の企業との関係で進めてきた共同研究センターの事業を学内の文系資源にも広げ、学外の協力対象も農業従事者、地域団体にまで広げることを意図したのが、組織改編の基本思想でした。このため、4月に入ってから、学内の教育学部にいる作曲家の先生と音楽イベントによる学内・外の活性化を検討したり、大学にほど近い集落で和紙を制作している作家の行灯による演出の事業化を検討することになりました。このような試みは、従来の産学連携では考えられなかったことです。

和紙の作家は、二俣という地区で、加賀紙衣という衣服にも使用できる独特の風合いを持つ和紙を制作しています。その和紙からは、行灯や着物の帯、そしてテディベアなども生み出されました。このような作家が大学から20分ほどの距離に住んでいることを知ったのも、センターの仕事をするようになったからでした。

金沢という地域は、観光資源、文化資源に恵まれています。また、加賀野菜、能登野菜という伝統野菜や、能登半島で捕れる魚介類は、新鮮で豊かな味を提供してくれます。このように環境に恵まれた金沢には、地域資源が眠っています。ただし、地域の方々に事業化のアドバイスをしたり、ブランディングによる的確な事業計画・目標の作成を勧める者がこれまでは必ずしも多くありませんでした。

ブランディングというと、平凡なものに付加価値をつけて売るということを想像する方が多いのが現状です。しかし、本当に大事なことは、自分が作っている物の価値を正確に把握し、どのような強みがあるのかを自分自身が理解した上で、その強みを消費者・顧客にそのまま伝えて理解してもらうことです。その分、ブランディングというのは地道な作業ですが、このような作業は地域の当事者でなければできないことですし、それに関われるのも地域にある大学ならではのことです。今後も地域にある大学として、このような活動を強みにして行くことが、まさに自分自身のブランディングなのだろうと考えています。

(掲載日 2008年7月28日)

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