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金沢大学法学類教授
同イノベーション創成センター将来開拓部門長
大友 信秀
石川県白山市旧河内村の奥山、奥池地区では、昔からヘイケカブラという野生のカブが自生し、地元の方々はこれを漬け物にしたり煮物にして食してきたが、現在では、ほとんど利用されなくなってきた。地域の生産者である立川貫二さんは、このヘイケカブラの種子を採取し、焼き畑により、現在でも栽培している数少ない方で、2年前から金沢大学法学部知的財産法ゼミの学生と一緒に、ヘイケカブラの再興と、そのための現代に合った調理法を考えてきた。
ヘイケカブラは同地域以外でも植生しているが、根の部分を食している地域はほとんどないらしい。カブは通常、煮すぎると煮くずれするやわらかい野菜というイメージがあるが、ヘイケカブラは水分が少なく、ちょっとやそっと煮た程度では味が染みない堅い野菜である。味を染みさせるには、カブを切り分け、圧力鍋で煮る必要がある。調理が簡単でないことに加え、味も独特の苦みがあり、どんな食べ方でも合うというものではない。
昨年は、地元のフレンチレストランAu milieu de la vie (オーミリュー ドゥ ラヴィ)に持ち込み、葉の部分はジュースに、根はポタージュに仕上げられ、予想以上の味に試食に立ち会った立川さんも学生も驚いた。とりわけジュースはアセロラがカブの辛みを引き立てすっきりとした味でおいしかった。根の部分もシェフの腕でおいしく仕上がっているが、おそらく普通のカブのほうがおいしく、ヘイケカブラでなければならない必然性はなかった。自分たちでも、赤ワインとシロップで甘く煮たものをデザートとして試作してみたが、地元の方々をまじえた試食会でもそれほど良い反応はなかった。
今年は、新たに根の部分を白ワインと蜂蜜で煮たものを用意し、これと前年に調理して保存しておいた赤ワインで煮たものをそれぞれアイスクリームに練り込んでみた。また、前の年に学生から出た、辛いカブならそばの薬味に使えるのではないか、という案を試すことにした。
野菜は収穫時期の問題があり、1年中いつでも調理法を試せるわけではない。1年間チャンスを待つ間、学生がいろいろと調べる中で、葉がイタリア料理で使用されるチーマ・ディ・ラパと同じなのではないかという情報を得た。イタリア料理店に持ち込んだところ、それとは違うということがわかったが、イタリア料理というヒントから、ジェラートを連想し、根の部分をアイスクリームにという発想が生まれたのだった。
今年の試食会の反応は上々で、そばの薬味の案は大成功。こちらは後で、同様の辛いカブ(辛み大根とは違う。)が福島県で栽培されていることも判明した。アイスクリームも、白ワインで煮たものはシナモン香がし、赤ワインで煮た方もカブの香りが赤ワインのコクと合わさり大人には好評だった。
ヘイケカブラの取り組みは、当初、地域の方からも半信半疑で見守られたが、次々と現れた新たな料理に、俄然やる気がわき、地元でカブを提供するレストランを運営することも検討されている。また、金沢市を中心に展開する外食チェーンもこの個性ある野菜に関心を示すようになった。
ブランディングの基本である、対象の個性が何かを見つめ続け、苦みや辛みを生かすという方法を探し続けたことが、門外漢である学生の自由な発想や好奇心と結びつき結果につながろうとしている。知的財産の活用法は数々あるが、奇をてらわない地域のブランディングをこれからも続けていきたいと思っている。
(掲載日 2008年12月1日)