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第60回 ラテンアメリカにおける知的財産権の保護

大東文化大学・東海大学・國學院大學 非常勤講師
税理士 佐々木 雄一

USTR(アメリカ合衆国通商代表部)は、知的財産権保護が不十分な国や公正かつ公平な市場アクセスを阻む国を特定するために、毎年スペシャル301条報告書を公表している。最も煩わしく、ひどい行為、政策、実務のある国をPriority Foreign Countryとし、不十分な知的財産権の保護を改善するために交渉中の国をPriority Watch List、監視が必要な国をWatch Listに列挙している。2008年報告ではPriority Foreign Countryは無い。Priority Watch Listには、アルゼンチン、チリ、中国、インド、イスラエル、パキスタン、ロシア、タイ、ベネズエラの9カ国が挙げられており、なかでも、中国とロシアに焦点が当てられている。Watch Listには36カ国が挙げられている。この報告はアメリカ合衆国が他国の知的財産権保護の状況を一方的に評価したものだが、ラテンアメリカの知的財産権保護の問題点をPriority Watch Listに挙げられたラテンアメリカ3カ国を通じて見ることができる。

アルゼンチンは、米国との協力関係や関税当局の執行面に改善が見られるが、製品の海賊版および模倣品の広範囲な利用可能性に対してより強力な知的財産権保護の執行を求め、医薬品市場化の承認取得のための非公開の試験やデータの不正商業使用に対して適切に保護していないこと等から、Priority Watch Listに長期間継続して名を連ねている。

チリは、著作権および商標権の侵害がひどく、これらを保護するために執行面で著しい改善が必要であること、また、その知的財産法制がTRIPs協定および米国とのFTAでコミットしている水準に達していないことより、2007年よりWatch ListよりPriority Watch Listに移管された。

ベネズエラは海賊版による著作権侵害が悪化していること、2003年より外国医薬品に特許権を与えておらず、また、2005年からは全く特許を付与していないこと、医薬品市場化の承認取得のための非公開の試験やデータの不正商業使用から保護されていないことからPriority Watch List掲載が2005年から継続されている。

今回の報告には海賊版や模倣品の闇市場が紹介され、ラテンアメリカではパラグアイ、アルゼンチン、ブラジル3国の国境地域、アルゼンチンのブエノスアイレス市、メキシコのメキシコ市内5ヵ所、プエブラ市、グアダラハラ市、モンテレイ市の市場が挙げられた。この他Watch Listには、ラテンアメリカでは、ボリビア、ブラジル、エクアドル、ジャマイカ、メキシコ、コロンビア、コスタ・リカ、ドミニカ共和国、グアテマラ、ペルーの10カ国が列挙されている。

(掲載日 2009年5月25日)

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