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苗村法律事務所※1
弁護士、ニューヨーク州弁護士 苗村 博子
1万4000人、アジアパシフィックパナソニックオープン最終日のギャラリーの数だそうだ。仕事でよくお世話になる公認会計士の方から、プレミア付とも言われる招待券を1枚頂き、朝5時の早起きもものともせず、城陽カントリーに馳せ参じた。私を含む多くのギャラリーのお目当ては、同大会のホストプロとして活躍する高校生の石川遼選手である。会場についてみると、パター練習場での練習中。テレビで見るよりずっと細いのに、くっきりと大きく見える。姪と二人、やっぱりオーラが違うと、感心しきり。ドライバーでの会心のファーストショット、コース裏の山道を登って、先回りし、グリーンで待って見る、パー5の2オン!18番では、ツーオン、ワンパットで、17番に続きバーディを決め、ギャラリーは大いに盛り上がる。私の姪も含め、どうみてもゴルフをなさったことのない老婦人まで、みな石川選手から元気をもらっているようだ。
だが、このギャラリーサイド、どうもテレビで見ているのと少し違う。スタッフや、同組のキャディの皆さんの目がとてもきつく、ちょっと殺気立った感じなのだ。理由はひとつ、カメラや携帯電話で撮影しようとする人が引きも切らないのだ。新聞でカメラを隠し、撮影しようとする中年男性、ピッという音に、石川選手は、アドレスをやり直した。どうやら、選手ご本人も、ギャラリーに何度も注意をされたようだし、他の選手からも指摘が相次いだとのことである。
日本人が、どんな場面でもルールに適応できないわけではない。7月に始まった裁判員裁判は、当初からの懸念事項である被害者が見える事件では量刑が重くなるとの問題はさておき、刑事訴訟法という難しいルールに対応し、裁判員は、自らの考えで判断した事実認定をしたではないか。何度注意されても、ルール違反をするゴルフ場のギャラリーと裁判員制度を成功裏に運用している裁判員。同じ市民の行いというのにこの差がどこからくるのか。責任を負わされたとき、人に見られているとき、日本人は、ルール意識をしっかり持つことができ、匿名で、かつ罰が明確でなければ、違反に抵抗がないのだろうか。そういえば、ゴルフ発祥の地、イギリスが判例法の国で、成文法を持たなかったのは、その場で必要なルールを皆が自覚していたからだという話を聞いたことがある。ギャラリーの迷惑行為に成文の罰が定められることにならないよう、ギャラリーも、トーナメントの参加者であるという自覚がほしい。