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成城大学法学部教授
成田 博
明治31年施行時の民法第587条は、「消費貸借ハ当事者ノ一方カ種類、品質及ヒ数量ノ同シキ物ヲ以テ返還ヲ為スコトヲ約シテ相手方カラ金銭其他ノ物ヲ受取ルニ因リテ其効力ヲ生ス」となっていた。筆者が気にするのは「種類、品質及ヒ数量ノ」のあとに続く「同」の訓み方である。筆者はこれを「ひとしき」とよむが、民法の現代語化によって、同条は、「消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる」となった。見て明らかな通り、「同」の字の訓みは「おなじ」、である。
民法第261条「各共有者ハ他ノ共有者カ分割ニ因リテ得タル物ニ付キ売主ト同シク其持分ニ応シテ担保ノ責ニ任ス」、第551条第2項「負担附贈与ニ付テハ贈与者ハ其負担ノ限度ニ於テ売主ト同シク担保ノ責ニ任ス」についても、民法の現代語化によって、「同シク」は「同じく」とされた。もっとも、濁点を付さない表記法のもとでは、「『同シ』ク」を「『おなじ』く」とよむのか「『ひとし』く」とよむのか、その限りでは、決め手を欠く。
それなら、これはどうか。民法第489条は、「当事者カ弁済ノ充当ヲ為ササルトキハ左ノ規定ニ従ヒ其弁済ヲ充当ス」としたあと、その第3号で「債務者ノ為メニ弁済ノ利益相同シキトキハ弁済期ノ先ツ至リタルモノ又ハ先ツ至ルヘキモノヲ先ニス」と規定していた。この号の「相同シキ」は何とよむか。もちろん、筆者は「あいひとしき」とよむ。今回の改正に関わった人たちも、これについては「ひとし」とよんでいたらしく、民法第489条の第3号は、「債務者のために弁済の利益が相等しいときは、弁済期が先に到来したもの又は先に到来すべきものに先に充当する」となった。ただし、「同」の字については、これを「等」に変えている(同条の第4号についても同じである)。
もうひとつ、比較のために挙げれば、民法第250条は「各共有者ノ持分ハ相均シキモノト推定ス」と規定していたが、今回の改正では、「均」の字が「等」に変えられた。その当否は別として、「相均シキ」を「あいひとしき」とよむことに疑いはないだろう。
明治の民法起草者は上記「同」の字をすべて「ひとし(き)」とよんでいたのではないか、と筆者は考える。今回の改正に関わった人たちは、一体、どのような根拠をもって、「同」の字を「おなじ」と「ひとし」とに読み分けたのだろう。それに関連して、民法第250条の「均」の字を「等」に変えたのはなぜかという疑問も残る。限りなく感覚的な印象ではあるが、ここは「均」の字のままで十分によかったのではないか。
民法の現代語化が行なわれたのは平成16年のことであるから、たったこれだけのことを言うのに随分と時間がかかったことになる。ボンヤリした頭でボンヤリ考えていたのが最大の原因ではあろうが、文言の微妙な変化をひとつひとつ吟味するには或る程度の時間を要するということもあるようには思うのである。
(掲載日 2010年1月25日)