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第186回 監査役会設置会社における社外取締役選任の義務付けの是非

弁護士・高岡法科大学教授
中島 史雄

法務省民事局参事官室は、昨年の12月7日に「会社法の見直しに関する中間試案」を、同14日にその「補足説明」を公表し、本年1月31日に締め切られたパブリック・コメントは団体から119件、個人から72件を数え、法制審議会商法部会はこれらの意見を踏まえて要綱案づくりに向けて審議を行っている。

中間試案では、「企業統治の在り方」や「親子会社に関する規律」その他多様な論点が盛り込まれている。日本では監査役会設置会社が大半であるから、本稿では「企業統治の在り方」のうち、表題のテ-マについてとりあげることにする。中間試案は、社外取締役選任の義務付けについては、公開会社でありかつ大会社である監査役会設置会社に1人以上を義務付けるA案、有価証券報告書提出会社に1人以上を義務付けるB案および現行法の規律を見直さないとするC案を併記して提案している。

A案およびB案を肯定する根拠として、経営全般の監督機能(経営全般を監督する機能と経営評価機能)および利益相反の監督機能(株式会社の経営者または経営者以外の利害関係者との間の利益相反を監督する機能)が補足説明で挙げられている。

経済界はこぞってC案を支持している。その理由として会社の自主性尊重、人材不足、社外監査役との機能重複などをあげている。これに対して、大多数の意見は、取締役会の活性化、透明化が図られ、会社不祥事の未然防止が期待できるほか、社外監査役との連携、協力により実効的監査が期待できるとして賛成している。そして、A案とB案とでは、社外取締役設置強制の目的からして、不特定多数の株主の存在を考慮するB案を支持する意見が圧倒的である。

また、社外取締役は2人以上置かなければ機能しないとする意見もあるが、大多数は反対意見を考慮して、1人でも一歩前進ととらえているようである。つぎに、社外取締役の要件の強化について、中間試案は、現行法の要件(会社法2条15号―当該会社の関係者)に、「親会社の関係者でないこと」および「会社関係者の近親者でないこと」を追加するA案(なお、「重要な取引先の関係者でないこと」を追加するかどうかは今後検討するとしている。)および現行法の規律を見直さないとするB案を併記している。すなわち、中間試案Aは当該会社の親会社の取締役、執行役、支配人その他の使用人でないものであることを追加するとともに、当該会社の取締役、執行役、支配人その他の使用人の配偶者または2親等内の血族もしくは姻族でないものであることを追加しようとするものである。社外監査役についても同様の提案をしている。

この点についても、B案を支持する経済界を除いて、A案を支持する多数の意見は親会社の関係者および会社関係者の近親者のみならず、重要な取引先の関係者も除外すべきであるとしている。グローバル・スタンダードに照応した社外取締役の独立性強化の視点から、当然のことである。

 

(掲載日 2012年4月9日)

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