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判例コラム
(旧)コラム

 

第194回 デン・ハーグの思い出

同志社大学教授
高杉 直

「デン・ハーグ(Den Haag)」は、オランダの中心都市の1つである。オランダといえば、チューリップ、風車、チーズなどを思い浮かべるが、観光地としては必ずしもそこまでポピュラーでないかもしれない。

しかし、国際的な「法」を専攻する者にとって、オランダ、とくにデン・ハーグは最も親しみのある都市である。というのも、「国際司法裁判所」や「ハーグ国際私法会議」の常設事務局が、デン・ハーグに置かれているからである。前者の国際司法裁判所は、国家間の紛争(領土紛争など)を国際法によって裁く国際的な裁判所である。国籍を異にする15人の裁判官で構成されているが、日本人としては小和田恒氏が裁判官を務めている。後者のハーグ国際私法会議は、国際私法・国際民事手続法の統一を図るための条約等を作成している国際機関である。日本が批准を予定している「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」も、ハーグ国際私法会議が1980年に採択したものである。

デン・ハーグでは、毎年7月上旬から8月中旬までの6週間、「ハーグ国際法アカデミー」の夏期セミナーが開講されている。このセミナーは、国際公法と国際私法の各3週間、国際司法裁判所の敷地内の講義室で行われている。私も若かりし頃、何度かセミナーを受講した。講師は、世界の著名な学者・実務家が務め、受講生も弁護士・政府関係者(将来の外交官を含む)・研究者・学生など世界中から集まってきている。講義自体は、午前中に3コマ(各1時間)のみであるが、各講師が1回行う夕方のゼミにも出席できる。また、セミナー期間中、国際司法裁判所の図書室を自由に利用できるので、勉学・研究に没頭することも可能である。世界各国の受講生と人的交流を楽しみたい場合には、近くのビーチに行けば常に多数の受講生が集まっているので、日没(午後11時頃)までビーチバレーに興じたり、朝方までバーでお酒を飲みながらお喋りをしたりできる。ダンス・パーティーやサッカー大会なども何度か開催されていたように思う。土日には、ブリュッセルやパリまで足を伸ばす受講生も多い。

大学卒で国際関係法の知識があれば受講資格があるので、ご関心のある方は「ハーグ国際法アカデミー」のウェブサイトをご覧いただきたい。

(掲載日 2012年6月25日)


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