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判例コラム
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第13号 嫡出子と非嫡出子の相続分の差異を定める民法の規定を法令違憲とし、違憲判断の遡及効を認めた最高裁大法廷決定※1 

~違憲判断の効力に関する議論の深化と事案の適切妥当な判断に向けて~

文献番号 2013WLJCC013
西村あさひ法律事務所※2
弁護士 細野敦

最高裁判所大法廷は、平成25年9月4日、民法900条4号ただし書のうち、非嫡出子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1とする部分(以下「本件規定」という。)が、遅くとも、本件の被相続人が死亡した平成13年7月当時において、憲法14条1項に違反していたとの違憲判断を行った。
本件規定の合憲性については、最大決平成7年7月5日※3(以下「平成7年大法廷決定」という。)が、「本件規定の立法理由は、法律上の配偶者との間に出生した嫡出子の立場を尊重するとともに、他方、被相続人の子である非嫡出子の立場にも配慮して、非嫡出子に嫡出子の二分の一の法定相続分を認めることにより、非嫡出子を保護しようとしたものであり、法律婚の尊重と非嫡出子の保護の調整を図ったものと解される。これを言い換えれば、民法が法律婚主義を採用している以上、法定相続分は婚姻関係にある配偶者とその子を優遇してこれを定めるが、他方、非嫡出子にも一定の法定相続分を認めてその保護を図ったものであると解される。現行民法は法律婚主義を採用しているのであるから、右のような本件規定の立法理由にも合理的な根拠があるというべきであり、本件規定が非嫡出子の法定相続分を嫡出子の二分の一としたことが、右立法理由との関連において著しく不合理であり、立法府に与えられた合理的な裁量判断の限界を超えたものということはできないのであって、本件規定は、合理的理由のない差別とはいえず、憲法一四条一項に反するものとはいえない」として合憲と判断して以来(ただし、5名の反対意見が付されていた。)、最高裁においては、辛うじて合憲判断が維持されてきていた※4
この間、平成22年7月、最高裁は、非嫡出子の相続格差をめぐる特別抗告事件につき大法廷回付をし、本件規定の合憲性の見直しを含めその判断の行方が注目されていたが、同事件は、最終的に当事者間で和解が成立し、同特別抗告は、平成23年3月9日に却下された※5。しかし、その後も、本件規定を巡っては、本件規定を法令違憲とする大阪高決平成23年8月24日※6や本件規定を適用違憲とする名古屋高決平成23年12月21日※7などの判断が相次いで出されながら、他方で、本件の原審となる東京高決平成24年6月22日が本件規定を合憲と判断するなど、実務でも議論が二分されており、社会的にも、最高裁大法廷の判断が注目されている中でなされた本件決定は、大方の予測どおり、本件規定を違憲とした※8
注目すべきは、本件決定が、法的安定性を重視して、違憲判断による遡及効を制限し、本件決定の違憲判断が、被相続人の相続開始時である平成13年7月から本件決定までの間に開始された他の相続につき、本件規定を前提としてされた遺産の分割の審判その他の裁判、遺産の分割の協議その他の合意等により確定的なものとなった法律関係に影響を及ぼすものではないと解するのが相当である旨判示している点である※9。既に、多数意見において法的安定性を重視している平成7年大法廷決定が、少なくとも純粋の個別的効力説ではないとの指摘がされており※10、学説でも、違憲判決の効力に関する一般的効力説と個別的効力説の接近・収斂化が指摘され、実質的な一般的効力説ないし弱い一般的効力説があるとの解釈が有力になっていたところ、国民の権利・自由の保護にとって必要とみなされる場合には、違憲無効の効果が一般的に遡及することもあり得るとし※11、概括的にいえば、民事法、行政法の領域では一般に遡及しないのに対し、刑事法とりわけ刑事実体法の領域では遡及することが原則と解する説が唱えられていた※12
また、本件規定につき違憲判断が出された場合の効力については、最高裁調査官も経験された中村心判事がすでに具体的事例を挙げて詳細に検討していたところであるが※13、本件決定は、「既に関係者間において裁判、合意等により確定的なものとなったといえる法律関係までをも現時点で覆すことは相当ではないが、関係者間の法律関係がそのような段階に至っていない事案であれば、本決定により違憲無効とされた本件規定の適用を排除した上で法律関係を確定的なものとするのが相当である」と判示した上で、具体的に、「相続開始により法律上当然に法定相続分に応じて分割される可分債権又は可分債務については、債務者から支払を受け、又は債権者に弁済をするに当たり、法定相続分に関する規定の適用が問題となり得るものであるから、相続の開始により直ちに本件規定の定める相続分割合による分割がされたものとして法律関係が確定的となったものとみることは相当ではなく、その後の関係者間での裁判の終局、明示又は黙示の合意の成立等により上記規定を改めて適用する必要がない状態となったといえる場合に初めて、法律関係が確定的なものとなったとみるのが相当である」と、どのような場合に法律関係が確定したといえるかの例示をしている。法廷意見によれば、遺産分割の審判や遺留分減殺請求訴訟が確定した場合はもとより、本件規定を前提として成立した遺産分割調停又は協議が成立した場合について本件規定の合憲性に関する錯誤により調停又は協議が無効とされる場面は限定的なように思われるが、この点は、金築誠志判事が、補足意見において、「本決定は、違憲判断の効果の及ばない場合について、網羅的に判示しているわけでもない。各裁判所は、本決定の判示を指針としつつも、違憲判断の要否等も含めて、事案の妥当な解決のために適切な判断を行っていく必要があるものと考える」旨述べて、具体的事案に応じた適切妥当な判断を求めている。
違憲判断の遡及効という憲法訴訟論上の極めて興味深い理論的な論点の提示を最高裁大法廷から受けながら、個々の事案における正義は、代理人をはじめとした実務家の手に委ねられたことを我々は肝に銘じなければなるまい。

(掲載日 2013年9月24日)

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