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判例コラム
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第213号 リツイートにシステム上伴うトリミングにより著作者名が表示されなかったことについて氏名表示権侵害を肯定した最高裁判決  

~リツイート事件最高裁判決(令和2年7月21日言渡)の検討~

文献番号 2020WLJCC025
東京大学大学院法学政治学研究科 教授
田村 善之

Ⅰ はじめに

 最判令和2.7.21平成30(受)1412(WestlawJapan文献番号2020WLJPCA07219001)[リツイート]※1は、システム上、リツイートに必然的に伴うトリミングにより元の画像にあった著作者名が落とされて表示されたことについて、氏名表示権侵害を肯定する判断を下した。しかし、リツイートを過度に制約しかねないことを懸念する説得的な反対意見が付されていることに加えて、そもそも最高裁が上告を受理すべき事件であったのかという疑問すら覚える事件であった。また、原審の知財高判平成30.4.25判時2382号24頁(WestlawJapan文献番号2018WLJPCA04259001)が同一性保持権や著作財産権についても判断を示していたのに比すると、上告審が取り上げた論点は氏名表示権に限定されており、積み残された課題も多い。そこで、以下では、最高裁が取り上げなかった論点については、原判決をも俯瞰することにしたい。

Ⅱ 事案

 本件の事案を、最高裁判決を理解するために必要な限度で簡略化して紹介すると、ウェブサイトにアップされている原告著作の写真に係る画像を含むツイートが投稿され、さらに、この元ツイートを引用するリツイートがなされたというものである。このリツイートの際に、ツイッターのシステムの仕様に起因して上下がトリミングされた結果、リツイート上では本件画像は、縦横の大きさが異なり、元の画像にあった原告の氏名表示部分が欠落した形で表示されることになった。そこで、原告が、これらリツイートによって公衆送信権、同一性保持権、氏名表示権等が侵害されたと主張して、ツイッターを運営する被告を相手取って、これらのリツイートに係る発信者情報の開示を求めて本訴を提起した※2
 第一審判決(東京地判平成28.9.15判時2382号41頁(WestlawJapan文献番号2016WLJPCA09159002))は、リツイートに係る原告の請求を一切認めなかった。
 原告が控訴。

Ⅲ 控訴審判決

 控訴審判決(知財高判平成30.4.25判時2382号24頁)は、リツイートによる公衆送信権侵害とその幇助の成立はこれを否定したが、同一性保持権侵害と氏名表示権侵害を肯定した。
 1 公衆送信権侵害とその幇助を否定
 「自動公衆送信の主体は、当該装置が受信者からの求めに応じ、情報を自動的に送信できる状態を作り出す行為を行う者と解されるところ(最高裁平成23年1月18日判決・民集65巻1号121頁参照)、本件写真のデータは、流通情報2(2)[筆者注:リンク先]のデータのみが送信されていることからすると、その自動公衆送信の主体は、流通情報2(2)のURLの開設者であって、本件リツイート者らではないというべきである。著作権侵害行為の主体が誰であるかは、行為の対象、方法、行為への関与の内容、程度等の諸般の事情を総合的に考慮して、規範的に解釈すべきであり、カラオケ法理と呼ばれるものも、その適用の一場面であると解される(最高裁平成23年1月20日判決・民集65巻1号399頁参照)が、本件において、本件リツイート者らを自動公衆送信の主体というべき事情は認め難い。控訴人は、本件アカウント3~5の管理者は、そのホーム画面を支配している上、ホーム画面閲覧の社会的経済的利益を得ていると主張するが、そのような事情は、あくまでも本件アカウント3~5のホーム画面に関する事情であって、流通情報2(2)のデータのみが送信されている本件写真について、本件リツイート者らを自動公衆送信の主体と認めることができる事情とはいえない。また、本件リツイート行為によって、本件写真の画像が、より広い範囲にユーザーのパソコン等の端末に表示されることとなるが、我が国の著作権法の解釈として、このような受け手の範囲が拡大することをもって、自動公衆送信の主体は、本件リツイート者らであるということはできない。さらに、本件リツイート行為が上記の自動公衆送信行為自体を容易にしたとはいい難いから、本件リツイート者らを幇助者と認めることはできず、その他、本件リツイート者らを幇助者というべき事情は認められない。」

 2 同一性保持権侵害を否定

 「本件アカウント3~5のタイムラインにおいて表示されている画像は、流通情報2(2)の画像とは異なるものである。この表示されている画像は、表示するに際して、本件リツイート行為の結果として送信されたHTMLプログラムやCSSプログラム等により、位置や大きさなどが指定されたために、上記のとおり画像が異なっているものであり、流通情報2(2)の画像データ自体に改変が加えられているものではない。
 しかし、表示される画像は、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものとして、著作権法2条1項1号にいう著作物ということができるところ、上記のとおり、表示するに際して、HTMLプログラムやCSSプログラム等により、位置や大きさなどを指定されたために、本件アカウント3~5のタイムラインにおいて表示されている画像は流通目録3~5のような画像となったものと認められるから、本件リツイート者らによって改変されたもので、同一性保持権が侵害されているということができる。」

 3 氏名表示権侵害を肯定

 「本件アカウント3~5のタイムラインにおいて表示されている画像には、控訴人の氏名は表示されていない。そして、前記(1)のとおり、表示するに際してHTMLプログラムやCSSプログラム等により、位置や大きさなどが指定されたために、本件アカウント3~5のタイムラインにおいて表示されている画像は流通目録3~5のような画像となり、控訴人の氏名が表示されなくなったものと認められるから、控訴人は、本件リツイート者らによって、本件リツイート行為により、著作物の公衆への提供又は提示に際し、著作者名を表示する権利を侵害されたということができる。」
 被告が上告。

Ⅳ 最高裁判決

 最高裁は氏名表示権侵害に関する上告受理申立理由に限定して上告を受理したうえで、上告を棄却した。

 1 著作権法19条1項について
 「著作権法19条1項は、文言上その適用を、同法21条から27条までに規定する権利に係る著作物の利用により著作物の公衆への提供又は提示をする場合に限定していない。また、同法19条1項は、著作者と著作物との結び付きに係る人格的利益を保護するものであると解されるが、その趣旨は、上記権利の侵害となる著作物の利用を伴うか否かにかかわらず妥当する。そうすると、同項の『著作物の公衆への提供若しくは提示』は、上記権利に係る著作物の利用によることを要しないと解するのが相当である。
 したがって、本件各リツイート者が、本件各リツイートによって、上記権利の侵害となる著作物の利用をしていなくても、本件各ウェブページを閲覧するユーザーの端末の画面上に著作物である本件各表示画像を表示したことは、著作権法19条1項の『著作物の公衆への・・・提示』に当たるということができる。」

 2 著作権法19条2項について

 「前記事実関係等によれば、被上告人は、本件写真画像の隅に著作者名の表示として本件氏名表示部分を付していたが、本件各リツイート者が本件各リツイートによって本件リンク画像表示データを送信したことにより、本件各表示画像はトリミングされた形で表示されることになり本件氏名表示部分が表示されなくなったものである(なお、このような画像の表示の仕方は、ツイッターのシステムの仕様によるものであるが、他方で、本件各リツイート者は、それを認識しているか否かにかかわらず、そのようなシステムを利用して本件各リツイートを行っており、上記の事態は、客観的には、その本件各リツイート者の行為によって現実に生ずるに至ったことが明らかである。)。また、本件各リツイート者は、本件各リツイートによって本件各表示画像を表示した本件各ウェブページにおいて、他に本件写真の著作者名の表示をしなかったものである。
 そして、本件各リツイート記事中の本件各表示画像をクリックすれば、本件氏名表示部分がある本件元画像を見ることができるとしても、本件各表示画像が表示されているウェブページとは別個のウェブページに本件氏名表示部分があるというにとどまり、本件各ウェブページを閲覧するユーザーは、本件各表示画像をクリックしない限り、著作者名の表示を目にすることはない。また、同ユーザーが本件各表示画像を通常クリックするといえるような事情もうかがわれない。そうすると、本件各リツイート記事中の本件各表示画像をクリックすれば、本件氏名表示部分がある本件元画像を見ることができるということをもって、本件各リツイート者が著作者名を表示したことになるものではないというべきである。」

 Ⅴ 控訴審判決の検討

 1 序
 控訴審判決は、本件リツイートによる公衆送信権侵害とその幇助を否定しながらも、同一性保持権侵害と氏名表示権侵害を肯定した。このうち、氏名表示権侵害についての控訴審判決の説示は通り一遍のものでしかないとともに、上告審判決でも取り扱われているので、ここでは公衆送信権侵害とその幇助の成否、そして同一性保持権侵害の成否の2点に絞って控訴審判決を検討する。

 2 公衆送信権侵害とその幇助を否定した点について

 1) リツイートの仕組み
 本件における公衆送信権侵害の成否等の著作権法上の諸論点を考察するうえで、肝要なことは、リツイートにより本件画像が表示されるといっても、それはリンクによるのであって、リツイートを表示するウェブページ(=リンク元)に係るサーバーにアップされているわけではなく、あくまでもリツイートが引用するツイートに係るウェブページ(=リンク先)にアップされている画像をインラインリンク(自動的にリンクを行うこと)により表示するに過ぎないということである。インターネットを利用するユーザーが閲覧のためにリツイートに係るウェブページにアクセスすると、自動的に、リンク先にアップされている本件画像データが、リンク先から直接(=リンク元を経由することなく)ユーザーの端末に送信されることになる。
 したがって、このようにリツイートの仕組みの主たる部分がリンクによって構成されている以上、本件を検討するに際しては、リンクに関する従前の議論が参考とされるべきものとなる。

 2) 従前の議論
 公衆送信権侵害に関しては、上記リンクの仕組み上、リンク元から公衆であるユーザーにデータを送信しているのはあくまでもリンク先であって、リンク元ではないために、リンク元は公衆送信をなしているわけではないとする議論がある※3
 裁判例の主流もこの見解を採用している(大阪地判平成25.6.20判時2218号112頁(WestlawJapan文献番号2013WLJPCA06209009)[ロケットニュース24]、札幌地判平成30.5.18平成28(ワ)2097(WestlawJapan文献番号2018WLJPCA05186003)[ペンギンパレード3]、札幌地判平成30.6.1平成28(ワ)2097(WestlawJapan文献番号2018WLJPCA06016002)[ペンギンパレード4]、札幌地判平成30.6.15平成28(ワ)2097(WestlawJapan文献番号2018WLJPCA06156001)[ペンギンパレード5]、東京地判令和元.6.19平成28(ワ)10264等(WestlawJapan文献番号2019WLJPCA06199005)[グラップラー刃牙])。リンクによる公衆送信権侵害を認めるかのような口吻を示す裁判例はあるが、いずれもリンク者自身がアップロードをなしているか(札幌地判平成30.4.27平成28(ワ)2097(WestlawJapan文献番号2018WLJPCA04276004)[ペンギンパレード2]、札幌高判平成30.12.13平成30(ネ)173(WestlawJapan文献番号2018WLJPCA12136013)[同]、いわゆるリーチサイト運営者に対する刑事事件であるが、大阪地判平成31.1.17平成29(わ)4356等(WestlawJapan文献番号2019WLJPCA01179004)[はるか夢の址])、それに関与しているものばかりである(東京地判平成26.1.17平成25(ワ)20542(WestlawJapan文献番号2014WLJPCA01179001)[どーじんぐ娘。])。唯一、アップロードをなすことなく、著作権者がウェブページで公開しているファイルに直にリンクを貼る行為について公衆送信権侵害を肯定する判決があるが(札幌地判平成29.6.14平成28(ワ)2097(WestlawJapan文献番号2017WLJPCA06146012)[ペンギンパレード1])、他に自身がアップロードをしたファイルにリンクを貼る行為もなしており、発信者情報開示請求事件という当該事件の文脈では傍論に止まる※4
 なお、学説では、情報の物理的な流れに着目する主流派の見解に与しつつも、インラインリンク等により、あたかもリンク先ではなくリンク元からコンテンツがユーザーに送信されているかのような誤解が生じる場合は別論となり、その場合には規範的にリンク元が公衆送信の主体となると考えるべきであるとの指摘が筆者等からなされていた※5。裁判例でも、リンクに係る事案ではないが、ソフトウェアが蔵置されていたサイトのURLをネットオークション経由でネットオークションの落札者に教示し、あわせて当該ソフトウェアに施されたアクセス・コントロールを回避する手段も講じたという事案で、「一連の経過」に着目して公衆送信権侵害を肯定した判決がある(東京地判平成30.1.30平成29(ワ)31837(WestlawJapan文献番号2018WLJPCA01309007)[建築CADソフトウェア])。

 3) 控訴審判決の意義
 そのようななか、本件控訴審判決は、第一に、リツイートに起因してユーザーのパソコン等の端末に表示されている画像は、リンク先の写真のデータが送信されたものであることを理由に、その公衆送信の主体はリンク先の開設者であって、リツイート者ではないとしている。そのうえで、第二に、ロクラク事件最判(最判平成23.1.20民集65巻1号399頁(WestlawJapan文献番号2011WLJPCA01209001)[ロクラクⅡ事件])に言及し、規範的主体論によるとしても、本件でリツイート者を自動公衆送信の主体とすべき事情は認めがたいと帰結している。
 前半は、従前の裁判例や学説の主流派と同様、問題となるデータの物理的な流れに着目してリツイート者が公衆送信の主体とならないとするものであるとともに、後半は、そのようなデータの物理的な流れ方で全てが決するわけではなく、規範的主体論の適用の余地があることを認めるものといえる。いかなる場合に規範的主体論によりリツイート者が公衆送信の主体と評価されるのかということについて控訴審判決は何も語らないが、逆にいえば、特段の事情が示されない限りは、原則どおり、データの送信元が公衆送信の主体となるということを示すものといえよう※6

 4) 検討
 公衆送信権侵害をなした者は誰かという問題は法的な評価の問題であるから、ロクラク事件最判を援用するまでもなく、データの物理的な流れ方だけで決せられるわけではないことは自明である。とはいうものの、データの物理的な送信元(=リンク先)に着目する見解は明快な基準を提供するものであるとともに、リンク先に対する差止請求を認めておけば、一網打尽に著作権侵害を停止することができるという効能もある。他方、インターネット上の情報の円滑な流通のインフラストラクチャーとして機能しているリンクを過度に萎縮させないようにするためには、主観的要件を要することなく侵害が認められてしまう著作権の直接侵害は防ぐに越したことはない※7。したがって、一般的には、リンク自体は公衆送信に該当しないと解すべきだろう。
 ただし、あくまでも、法的な評価である以上、リンク先以外の者が公衆送信の主体と評価される場合がありうることは否定されない。その一例が、あたかもリンク元から送信されているかの如き誤解がユーザーに生じる場合である。そのような誤解が生じる原因が専らリンク元にある以上、リンク先に侵害の責任を課すわけにはいかない反面、リンク元に対する差止請求を認めない限りは、紛争の抜本的な解決を図ることができないからである。また、その他の例として、リンク先では批評目的で説明文付きでアップロードされた画像に説明文が付加されていたのだが(ゆえに著作権法32条1項で画像に関する著作権の侵害が否定される)、リンク元で説明文抜きで当該画像のみをインラインリンクで表示した場合にも、そのような新たな表現を世に現出せしめたのはリンク元であるのだから、(ユーザーの誤解の有無に関わらず)リンク元が公衆送信の主体であると解し、リンク元が著作権侵害行為をなしている(著作権法32条1項により著作権が制限されない)と取り扱うべきであろう※8。その種の事情が示されていない本件においては、規範的主体論による例外を認めなかった控訴審判決の判断は穏当な取扱いをなしたものといえる。

 5) 公衆送信権侵害の幇助を否定した点について
 例外的な事情がない限り、リンクによる公衆送信権の直接侵害の成立は困難であるという見解をとるとしても、その次に、公衆送信権侵害を働いているURLにリンクを貼る行為に関しては、民法の共同不法行為としての幇助を認めるべきではないかという論点がある。
 裁判例では、インラインリンクにより不特定多数の者が問題の画像にアクセスしてこれを閲覧することを容易にしたと評価しうることを理由に、幇助を肯定した裁判例がある(札幌地判平成30.5.18平成28(ワ)2097[ペンギンパレード3]、札幌地判平成30.6.1平成28(ワ)2097[ペンギンパレード4]、札幌地判平成30.6.15平成28(ワ)2097[ペンギンパレード5])※9。原告著作権者から抗議を受け、アップロード著作権者の許諾なく行われたことを認識しえた時点で直ちにリンクを削除したという事情を斟酌して、「違法に幇助したものでもなく、故意又は過失があったともいえない」ことを理由に、不法行為の成立を否定する判決があるが(前掲大阪地判[ロケットニュース24])、一般論として、リンクによる幇助の成立が定型的に否定されたわけではない※10
 ところが、本件控訴審判決は、一般論として、リツイートによる幇助の成立を否定する判断を示した。本判決に先立って、学説でも、リンクは受信者であるユーザーの受信行為を助長しているのだから、受信行為が違法な場合(e.g. 著作権法30条1項4号)に当該受信行為の幇助となることは格別、公衆送信の幇助には該当しない旨を説く少数ながら有力な見解がある※11
 しかし、リンクによる公衆送信により伝達される公衆の数が増大する可能性を生じる以上、侵害の効果を抑止するために、幇助による共同不法行為責任の成立を認めるべきであろう※12。本件控訴審判決は、リツイートが自動公衆送信行為自体を容易にしたとはいいがたいと論じているが、すでに行為が完了しているリンク先の送信可能化についてはそのようにいえるとしても、リンクによって新たなユーザーという公衆に著作物が送信されることになる以上、公衆送信の幇助を否定する理由はないように思われる。この理は、前記少数有力説にも妥当する※13。そして、本稿のように幇助の成立の余地を残したところで、共同不法行為の責任を課すためには故意または過失が要求されるのだから、あとは過失の判断のところで特段の事情がない限り過失を肯定することのないような解釈を採用すればリンクを過度に萎縮させることもないだろう。

 3 同一性保持権侵害を肯定した点について

 1) 序
 本件控訴審判決は、本件リツイート者によって改変がなされているところ、本件では著作権法20条4項の「やむを得ない」改変に当たると認めることはできないと判示し、同一性保持権侵害を肯定した。

 2) 改変該当性

 リンクと同一性保持権侵害に関しては、そもそも同一性保持権一般の論点として、著作権法20条1項の規定ぶりが氏名表示権侵害に関する同法19条1項と異なり、「改変」のみを侵害としており、改変された著作物を公に伝達する行為一般を規律する形式となっていないために、みなし侵害(同法113条1項)にも該当しない公衆送信を同一性保持権侵害に問えないのではないかということとの関わり合いが問題となる※14。近時の裁判例や学説では、公衆送信の際に改変著作物を複製している場合には、これを「改変」とみて同一性保持権侵害を問いうる旨を説く見解が有力である※15。しかし、この見解をもってしても、改変著作物がアップされているURLにリンクを貼っただけでは複製を伴うわけではないので、同一性保持権侵害を問うことはできない。裁判例では、写真の周辺を緑色で縁取る加工をなした本人がアップロードに加えてリンクをなしたという事案で、アップロードとリンクを一体的に把握し同一性保持権侵害を肯定したと読みうる説示をなした判決があるが(前掲札幌地判[ペンギンパレード2])、リンク単独で侵害を認めたわけではない。本件の第一審判決も、リツイートにより画像ファイルの複製がなされていないことを指摘したのち、その論理的な関係は詳らかにしていないが、画像ファイルの「改変」もなされていないと帰結している。
 そのようななか、本件控訴審判決は、「HTMLプログラムやCSSプログラム等により、位置や大きさなどを指定されたために、本件アカウント3~5のタイムラインにおいて表示されている画像は流通目録3~5のような画像となったものと認められる」ことを理由に改変該当性を認めている。また、本件控訴審判決よりも後の裁判例となるが、インラインリンクにより円形のフレーム内にトリミングして表示されるプロフィール画像につき、画像データが加工されているのではなく、ただユーザーの手元でそのように表示される場合(その意味で無形的な改変)も「改変」に該当するとする判決も現れている(東京地判令和元.12.24平成29(ワ)33550(WestlawJapan文献番号2019WLJPCA12249004)[プロフィール画像])。
 たしかに著作権法20条1項は、法文上、「改変」がなされることを規律しており、その後の行為はその関知するところではないように読めるのであるが、ただ何をもって「改変」と考えるかは、同項の法解釈の問題であり、規範的な評価が可能であるというべきである。そして、改変該当性を否定していた従来の議論は、すでに改変がなされており、その結果物が拡布される場合を念頭に置いていたものであった。それに対して、本件では、(その侵害主体がリツイート者であるか否かは後述するように議論がありうるが)リツイートが起点となって初めて改変と評価しうる表示が世に現出しているのであるから、これをもって改変ということに支障はないというべきであろう(さもないと、著作物性の同一性を害する表示が現存するにも関わらず、「改変」がどこにもないことになりかねない)※16。この点に深く拘泥することなく、改変該当性を認めた本件控訴審判決は結論として正当である※17

3) 「やむを得ない改変」該当性を否定した点について

 従前の裁判例では、リンクによってシステム上、元の画像そのものではなくトリミングされた形で表示されることになる場合に、同一性保持権侵害が成立するのかということが争われることが少なくなく、そのような事情があることをもって、著作権法20条2項4号※18にいう「やむを得ないと認められる改変」に当たるのかということが議論されている。
 たとえば、本件控訴審判決の後の裁判例となるが、インラインリンクにより円形のフレーム内にトリミングして表示されるプロフィール画像につき、フレームリンクや埋め込み型リンクを採用した場合にそのように表示する必要性はないことを理由に著作権法20条2項4号の「やむを得ない改変」とは認めなかった判決がある(前掲東京地判[プロフィール画像])※19
 他方、著作権法20条2項4号該当性の肯定例としては、グーグル社が提供する画像検索サービスに「ペンギン」と入力して検索を行うと多数のペンギンの画像の中に1枚だけ直立した猫の画像が含まれるという結果が表示されることを紹介し論評するサイトにおいて、検索エンジンサービスにおいて検索結果として表示される画像が縮小されてサムネイル表示されることについては当時の著作権法47条の6(現在の47条の5第1号の前身)の趣旨を考慮して、また、この検索結果をスクリーンショットにより複製した画像を表示することについても前記利用目的と本件写真や画像Aが多数のペンギンの画像の一部に過ぎないことを斟酌して、いずれについても利用の目的、態様に照らして「やむを得ない改変」に該当すると判示して、同一性保持権侵害を否定する判決がある(前掲札幌地判[ペンギンパレード5])。
 そのようななか本件控訴審判決は、単に元ツイート(リンク先)において原告に無断で本件写真の画像ファイルを含むツイートが行われたもののリツイート行為であることを指摘するだけで、「やむを得ない改変」に該当しないと帰結している。原告に無断で利用するツイートがなされているという事実は、それにより著作権侵害あるいは氏名表示権侵害という意味で著作者人格権侵害をなしていることを示すために摘示されており、そのような権利侵害を働いているものをリツイートする以上、「やむを得ない改変」に該当しないということをいいたいのであろうか※20
 しかし、著作者に無断でアップされているか否かということが容易には分かりがたい場合も少なくない以上、本件控訴審判決のような論理で同一性保持権侵害が肯定されてしまうのでは、リツイートの際にインラインリンクで元ツイートにおける画像をトリミング表示することを萎縮させることになりかねない。かりに社会的意義のあるSNSであるツイートにおいて、リツイートによる元ツイート(リンク先)へのインラインリンクが便宜な参照形式として用いられており、その際に元ツイートの画像をトリミングすることなく全体として表示することを要求することによりリツイートの利便性が大きく阻害されてしまうのであれば、本件控訴審判決が摘示した程度の事情で、同一性保持権侵害を肯定すべきではないだろう※21
 あるいは、本判決は、そのような事情はツイッターのサービスを運営する被告にとって「やむを得ない」事情に該当する可能性があるとしても※22、本件で問題とされている行為者はリツイート者である以上、リツイート者は他人であるツイッター運営者に関わる事情を自己にとって「やむを得ない」事情として援用することはできないと考えているのかもしれない。しかし、本稿が先に指摘したような事情がかりにツイッター運営者にとって「やむを得ない」事情であると認められるのであれば、その提供するサービスをそのまま受益しているに過ぎないリツイート者がそのような事情を主張することを認めないことには、ツイッター運営者は当該サービスを提供することに困難を覚えざるをえず、何のために同一性保持権侵害を否定してもらったのか分からなくなりかねない。したがって、ツイッター運営者にとってリツイートに随伴するトリミングが著作権法20条2項4号に該当するのであれば、リツイート者もそれを援用することが許されると考えるべきである※23※24

 4) 同一性保持権侵害の行為主体について

 さらにいえば、そもそもリツイートによるトリミングを設計したのはリツイート者ではなくツイッター運営者なのであるから、本件改変の行為主体もリツイート者ではなく運営者であると解すべきであるように思われる※25。もちろん、システムが予定している範囲※26を逸脱した行動をリツイート者がなしたことに起因して改変がなされたというのであれば、行為主体はリツイート者になるというべきであるが、本判決が摘示している程度の事情でそれによって改変の程度が変わるものではなく、行為主体に影響しないと考えるべきであろう。そして、かりに本件のようなトリミングによる同一性保持権侵害が真実忌避すべきものであるならば(著作権法20条2項4号該当性のところで論じたように、本稿はそのこと自体に疑問を覚えるものではあるが)、リツイートをするかしないかの二択しか有していないリツイート者に責任を課すよりも、システムの運営者を侵害行為主体として捕捉したほうが、適切な回避措置の導入を促すことになろう。
 しかし、発信者情報開示請求事件である本件では、ツイッターの運営者である被告に、改変主体はリツイート者ではなく被告自身であるというような自己の首を絞める主張を期待することは困難であり、実際にそのような主張はなされていない※27。この点については、最高裁判決を検討した後で、本件の事案の特殊性の問題として再訪することにしよう。

 Ⅵ 最高裁判決の検討

 1 序
 本件最高裁判決は氏名表示権侵害を肯定するにあたり、第一に、著作権法19条1項に関し、著作財産権の支分権に該当する行為が行われていない場合には同項の「著作物の公衆への提供若しくは提示」に該当しないという主張を退け※28、第二に、同法19条2項に関し、リツイート中の問題の表示画像をクリックすれば氏名が表示されている元ツイートの元画像を閲覧することができるのだから著作者名を表示したことになる旨の主張を退けている。いずれもそれ自体としては穏当な解釈であると考えるが、本件において氏名表示権侵害を肯定すべきか否かということを考える際に最も重要な論点が取り上げられていないという感を否めない。

 2 著作権法19条1項該当性を肯定した点について
 氏名表示権侵害については、同一性保持権と異なり、公の伝達行為が侵害行為を組成することに条文上の支障はないはずであるが※29、裁判例では、前述したリンクは公衆送信に該当しないという解釈を採用しつつ、ゆえに、著作権法19条2項の「公衆への提供若しくは提示」をなしたことにならないと説く判決があった(前掲大阪地判[ロケットニュース24])。本件の第一審判決もこの立場に与するものであるように読める説示をなしていた※30※31
 しかし、著作権者の財産的利益を守ることを目的とする著作財産権の規律と、著作者の人格的利益を保護することを防ぐことを目的とする著作者人格権の規律が同じものとなる必要はない※32。かりにリンクが公衆送信に該当しないとしても、リンクにより著作者の意に反する氏名表示に触れる公衆が増える可能性がある以上、著作者の人格的利益の侵害の拡大を防ぐべく、氏名表示権によって規律すべき行為に該当するというべきであろう※33
 この点に関し、最高裁判決は、著作権法19条1項に、文言上、その適用を同法21条から27条の支分権に係る利用行為に該当する場合に限定していないこと、著作者と著作物の結び付きに係る人格的利益を保護しようとする同法19条1項の趣旨は、支分権の侵害に係る利用を伴うか否かに関わらず、妥当するといえることを理由に、同項の「著作物の公衆への提供若しくは提示」は、支分権に係る著作物の利用によることを要しないと解釈した。理由付けともども至当といえる。

 3 著作権法19条2項該当性を否定した点について
 上告審では、ユーザーがリツイートに係る問題の表示画像をクリックすれば、氏名が表示されている元の画像を閲覧することができるのだから、リツイート者は、「すでに著作者が表示しているところに従って著作者名を表示」しているとして、著作権法19条2項により氏名表示権侵害が否定されるのではないかということが争点となった。しかし、最高裁は、ユーザーが表示画像をクリックしない限り著作者名の表示を目にすることはなく、また、ユーザーが表示画像を通常クリックするといえるような事情もうかがわれないことを理由として、これを退けている。
 さて、著作権法上の氏名表示権は、著作物にどのような著作者名を表示したり表示しなかったりするかということに関する権利であって、著作者に関する情報が誤解されることを防ぐ権利ではない。このことは、著作権法19条1項の文言上、著作物を利用することなく、「あの小説の著作者は○○である」という虚偽の情報を流布したとしても、名誉毀損に該当しうることは格別(参照、東京地判平成13.12.25判時1792号79頁(WestlawJapan文献番号2001WLJPCA12250005)[聖母エヴァンゲリオン])、著作者人格権侵害としての氏名表示権侵害には該当しないことに鑑みれば明らかであろう。くわえて、著作権法119条2項が定める氏名表示権侵害に対する罪の法定刑は、刑法230条1項の名誉毀損に対する罪のそれを上回っているから、両者は重なるところはあっても、その適用領域を異にするものであることもまた明らかである。そしてその適用領域の違いは、前者が著作物の利用を伴っていることに求められよう。著作者名がいかに騙られようが、著作物を利用しないところでは、氏名表示権侵害は成立しないのである※34
 逆にいえば、著作物に表示されていた著作者名を抹消する行為は、著作者に関する情報を誤るのではなかったとしても、氏名表示権を侵害するものというべきである。氏名表示権侵害が否定されるために、著作者が表示しているところに従って表示をなすことを求める著作権法19条2項の要件構造はこの文脈で理解することができる。その意味で、氏名表示権は著作物にどのような著作者名を付するのか、あるいは付さないのかを決定する権利であるといい換えてもよい。
 もちろん、ここで「付す」(条文の文言上は「表示する」)といっても、法的な評価の問題である以上、物理的に付されていなかったとしても規範的に付されていると評価することは可能であるというべきである。本件最高裁判決が示唆するように、本件においてリツイートにおける表示画像をクリックして元の画像にある著作者名に接するのがユーザーの通常の行動であるというのであれば、規範的に観て、著作物に著作者名が付されていると評価することは不可能ではないだろう。しかし、そうはいっても、ただユーザーが見ようと思えば著作者名に接することかできるという程度では、著作物と著作者名の結び付きは薄弱に過ぎ、氏名表示権侵害を否定する事情として不足があるといわざるをえない。その点を指摘して、著作権法19条2項該当性を否定した本件最高裁判決は正当な判断を示したものと評価できる。

4 著作権法19条3項該当性について
 しかし、そもそも本件のシステムによる著作者の不利益が氏名表示権侵害を肯定するに足りるほどのものだったのかということには、疑問が残る。そして、本件では争点とされていないが、著作権法19条3項は、著作者名の表示を省略しても、「著作物の利用の目的及び態様に照らし著作者が創作者であることを主張する利益を害するおそれがないと認められる」ことを要求している。条文上、「著作物の利用の目的及び態様に照らし」という要件があえて挿入されている以上、著作物の利用の利益という観点から著作者の利益を評価することは前提とされており、その際に著作者の利益に対して利用者の利益を衡量することが予定されていると解される。
 既述したように、ユーザーがクリックしさえすれば元の画像の氏名表示に接しうるという事情は、定型的に氏名表示権侵害を否定する著作権法19条2項の場面では、それでもって著作者名を表示したことにはならないと解すべきではあるものの、利益衡量の下で侵害を否定すべきであるか否かを判別する同法19条3項の適用場面では、本件表示によって著作者が受ける不利益の程度を低く見積もる方向に斟酌することが許されよう。そもそも、リツイートが元ツイートの全てではなくその一部を表示するものであることは、通常のユーザーにはただちにそれと分かるような体裁になっており、リツイート上では著作者名が消えていたとしても、そしてその際にわざわざクリックしなかったとしても、確認をしない限り著作者名が表示されているか否かは分からないという認識を有するのではなかろうか。つまりクリックをするのが通常とはいえなかったとしても、だからといってそれでただちに無名の著作物であると一般に受け止められているということにはならないように思われる※35
 他方、同一性保持権侵害のところで述べたように、本件では、氏名表示が欠落した理由は、ツイッターのシステムの仕様によるとされている※36。そして、本件のリツイートのシステムに起因する氏名表示権侵害は、林景一判事の反対意見が指摘しているように、猥褻物などとは異なり、一見して侵害か否かが判断できるものではなく、元の画像に著作者名があり、それがリツイートによりトリミングされるか否かを確認する必要がある※37。リツイートは、インターネットにおける情報の流通の一翼を担うインフラストラクチャーの一つであるツイートにおいて、迅速かつ簡便に大量に情報をやりとりすることを可能とする重要な機能を果たしている。その際に、本判決の法理の下、その種の確認をなすことを迫られる場合には、リツイートの迅速性、簡便性を減殺することになりかねない※38
 前述したように、リツイートに対するユーザーの受け止め方などを斟酌して著作者が受ける不利益がそれほど大きくないと思料されるのであれば、こうしたリツイートの利便性に鑑み、著作権法19条3項による制限が正当化されるというべきであろう※39

 Ⅶ 残された課題

 原判決は、公衆送信権侵害とその幇助を否定し、同一性保持権侵害を肯定していた。このうち、同一性保持権侵害を肯定する控訴審の結論は、氏名表示権侵害を肯定した本件最高裁判決以上に、その弊害が大きい。
 なぜならば、本件の事案で氏名表示権侵害を支える要素を抽出するならば、元の画像に著作者名が表示されており、それがリツイートの際にシステム上の制約のためにトリミングされたというものとなり、本件最高裁判決の射程もその種の事案に及ぶに止まる。元の画像に著作者名が表示されていない場合は射程から外れることになり、おそらくかなりの割合いのリツイートが本判決とは無関係ということになるだろう※40。ところが、同一性保持権侵害の論理は、元ツイートの内容に関わらず、縦横の大きさが異なりトリミングされていること自体が「改変」に当たるとされるのだとすれば、大半のリツイートに妥当してしまう。
 システムに起因するトリミングに基づく著作者名の不表示をリツイート者がなした行為であり、クリックすれば元の著作物の著作者名を見て取れるということをもって著作者名が表示されたことになるものではないとする本件最高裁判決が、かりに、同一性保持権侵害についても裁いていたならば、トリミングに伴う改変もリツイート者がなしたものであり、クリックすれば元ツイートに係る著作物を見て取れるとしても「改変」との評価に変わるところはないと判示されていたかもしれない※41。最高裁が上告を受理しなかった意図は定かではないが、あるいは、氏名表示権侵害を肯定することは質的に異なる影響度を慮ったのかもしれない。より深刻な事態が回避されたという意味では喜ばしいことであったのかもしれない。
 さて、本件は、このように重大な影響を有する事件であるにも関わらず、裁判の帰趨に最も利害関係を有する者、すなわちリツイート者が当事者として登場していないという特徴がある。しかも、ツイッターのシステムに起因するトリミングにより著作者名が表示されなかったという事案の下で、同一性保持権や氏名表示権侵害をなした主体はリツイート者なのか、それともツイッターの運営者なのかという論点は本来、本件において主要な争点の一つとなるべきものであるはずなのだが、既述したように、訴訟当事者であるツイッター運営者に自らが責任を負うことにつながる主張をなすことは期待しにくく、現になしていない。つまり、本件訴訟は、本件に係る事案で侵害を認めるべきか否かに関わる重要な争点について、訴訟当事者に十分な主張立証を尽くすことを期待しえないという構造的な限界がある案件であった。リツイートをなす者が極めて多数に上るという意味で本件に関する最高裁の判断は社会に大きな影響を与えるものであるにも関わらず、真の利害関係者の手続保障が十分になされないことが見込まれる事件をあえて取り上げる意義がどこにあるのか、疑問を禁じえない。むしろ、リツイート者自身が訴訟当事者となる案件が上がってくるのを待つべきであったのではなかろうか。
 さらにいえば、そもそも本件原告の訴訟意図が、リツイート行為からの著作者の保護を目的としていたものではなかった可能性が高いことにも注意しなければならない。本件で原告は、元ツイート者とリツイート者が同一人であると主張していた。この主張は事実認定の問題として退けられているが、原告の代理人は、本件訴訟でリツイートを侵害行為に含めた趣旨は、なるべく新しい時点の侵害行為を特定することにより、可能な限り新しい発信者情報を得たかったからだと述べている※42。これはプロバイダ責任制限法の解釈に関係する。
 同法上、発信者情報の開示請求が認められるためには、「侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき」が必要であるところ(プロバイダ責任制限法4条1項1号)、請求が認められた場合に開示される発信者情報は「侵害情報に係るIPアドレス」(プロバイダ責任制限法の発信者情報を定める省令4号)、「第4号のIPアドレスを割り当てられた電気通信設備・・・から開示関係役務提供者の用いる特定電気通信設備に侵害情報が送信された年月日及び時刻」(7号)などとされている。この省令の定める発信者情報について、なんらかの事情で過去に侵害行為(e.g. 元ツイート)をなした者と同一人がその後の行為(e.g.リツイート、最新ログイン)をなしていることが判明した場合、その後の行為がかりに侵害を構成しないとしても、過去の侵害行為に係る発信者の情報であるとしてその開示が認められるのであれば、あえて新しい行為を侵害であると主張する必要はない。しかし、本件第一審判決や本件控訴審判決は、最新ログイン時のIPアドレスやタイムスタンプは、侵害情報の発信とは無関係であるとして、開示の対象に当たるものとは認めなかった。このような解釈の下で、著作者としては、リツイートに伴うトリミングによって被る人格的利益の被害に対する保護を求めてというよりは、むしろ元ツイートによる被害からの救済を求めて、その元ツイート者を特定するなるべく多くの情報を求めるために、本件リツイート者の行為を侵害であると主張してその侵害に係る情報の開示を請求したというのが、本件紛争の真の利害状況であるということになる※43。本件はインターネット上で広く許容されており、特に問題視されることもないリツイートに不可避的に随伴する「寛容的利用」※44が、たまたま不幸な経緯が重なって、訴訟の対象に選ばれてしまった事件であるといえるかもしれない。
 かりにこの見立てが正しいのだとすると、本件のリツイート関連の訴訟は、もしかすると誰も真剣には違法視することを求めていないにも関わらず訴訟の対象に選ばれてしまっていることになる。そのような状況下で、侵害を肯定する結論をとらざるをえないのであれば、不必要に違法であることを明らかにして寛容的利用を萎縮させることを防ぐために、やはり上告を受理することなく、発信者情報開示請求に関する解釈論を研ぎ澄ましたり、立法による対応を進展したりすることによって、この種の訴訟が雲散霧消するのを待つべきであったように思われる。
 もちろん、こうした裁量を働かすことができるのは上告受理制度を有する上告審に限られ、また、かりに上告審においても違法としない結論をとることができるのであれば、むしろ同一性保持権侵害を肯定した点も含めて原判決を正すために上告を受理すべきであったということもできる。そして、まさにこうした寛容的利用に対処するために、権利を制限する一般条項が存在する。フェア・ユースに相当する条項を欠く著作財産権と異なり、同一性保持権侵害や氏名表示権侵害に対してはこれを制限する一般条項(著作権法20条2項4号、同法19条1項3号)があるのであるから、その意味でも、これらの条項を活用して寛容的利用に関して通用している一般の規範を吸い上げることが本来望ましい解決であったのだろう。

※ 本稿の作成に際しては、資料の収集や分析に関して、東京大学法学政治学研究科研究生の劉楊さんのお世話になった。記して感謝申し上げる。


(掲載日 2020年10月5日)

(掲載日 2020年10月5日)

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