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文献番号 2022WLJCC016
東京都立大学 名誉教授
前田 雅英
Ⅰ 判例のポイント
公訴事実によれば、火力発電システム等に係る施設・設備の開発、製造等に関する業務等を目的とするA株式会社(本件会社)の取締役常務執行役員で、同社の火力発電所建設プロジェクト等を統括していた被告人Xは、同社がタイにおいて遂行していた火力発電所建設工事に関して、建設工事現場付近に建設した仮桟橋に、火力発電所建設関連部品を積載したはしけを接岸させて貨物を陸揚げしようとしたところ、タイ国運輸省港湾局の地方支局長Bから、はしけの総トン数が制限を超えているという許可条件違反を指摘され、貨物を陸揚げできなかったので、Xは同社執行役員(調達総括部長)Yと、同社調達総括部ロジスティクス部長Zほか数名と共謀の上、平成27年2月17日頃、Bに対し、許可条件違反を黙認し、はしけの接岸・貨物陸揚げ等の有利かつ便宜な取り計らいを受けたいとの趣旨の下に、同国内の業者を介し、現金1100万タイバーツ(当時の円換算3993万円相当)を供与し、もって外国公務員等に対し、国際的な商取引に関して営業上の不正の利益を得るために、その外国公務員等に、その職務に関する行為をさせないことを目的として、金銭を供与したという不正競争防止法違反事件※2である。
第1審判決は、公訴事実をほぼ認定し、Xを懲役1年6月、3年間執行猶予に処した。
Xの控訴を受けた原判決は、Xに不正競争防止法18条1項違反の罪の共同正犯の成立を認めた点には事実誤認があるとして、第1審判決を破棄し、Xには同罪の幇助犯が成立するとして、Xを罰金250万円に処した。
争点は、X、Y、Z等の間に、不正競争防止法18条1項違反の罪の共謀が認められるかにある。
Ⅱ 事実の概要
Ⅲ 判旨
Ⅳ コメント
(掲載日 2022年6月7日)