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判例コラム
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第48回 ビジネスクリエイト道場

金沢大学 法学類 教授
同 イノベーション創成センター 将来開拓部門長
大友信秀

金沢大学イノベーション創成センター(2008年7月28日掲載)は、地域イノベーションを創出するため、事業化をめざすワークショップ「ビジネスクリエイト道場」を本年1月から開催している。参加者は地元の企業、農家、お菓子屋等、「食」に関わっていたり、これから参入を考えている方々である。

ワークショップは、これらの方々を入門者とし、先駆的な成功事例を持つ事業者を師範代、専門的な知識を持つ学識者を師範に見立てて、いわゆる農業の6次産業化(1次産業である農業生産に、2次産業である加工、3次産業である流通販売を取り込むこと)を意識して事業化に必要な視点を学ぶというものである。このため、全7回は、生産、加工、流通販売、IT戦略、ブランディングという内容を含んでいる。

生産から先を意識していなかった農家がSWOT分析の手法により、成功事例を評価したり、既存の販売ルートしか意識していない参加者がネット販売の工夫を目の当たりにする姿は活気に満ち、毎回、終了後も師範代や師範と話し続ける入門者の意欲に感心するばかりである。また、会場には、聴講者も数多く参加しており、この取り組みへの関心の高さが伺える。

師範代たちも入門者によるSWOT分析により新たな視点を得ており、学習の場というより互いに修練する道場という名にふさわしい活動が展開されている。私自身も次回はブランディングを担当する予定だが、進行役である農産品の生産・加工・販売を行っている株式会社のCEOの要求は高く、こんなやり方で説明できるのだろうか、という方法を提案され、普段使わない頭の使い方をしている。

産官学連携という掛け声はあるが、実際に、大学が汗をかき、地元のために場を設定し、事業者と向き合っている例はどれだけあるのだろうか。もちろん、金沢大学のような例は、大学の力のみで実現したのではなく、大学の試みを好意的に見てくれる地元企業、自治体、地域住民がいて初めて可能となったものである。

このような大学と地域の近さ、一体感を感じられるのが、地方大学の利点であるとしみじみ感じている。最終回は3月12日に予定されており、そこでは入門者が自らの事業計画をバイヤーにプレゼンテーションすることになっている。金沢で実現した新たな取り組みから、ひとつでも多くバイヤーの目に留まる計画が出ることを期待している。

(掲載日 2009年2月23日)

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