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東海大学法学部教授
西山 由美
今回の総選挙は、「解散から40日以内」(憲法54条1項)ぎりぎりの、しかも8月中の投開票と、長く熱い戦いとなりそうだ。選挙戦の中で消費税率引き上げの問題は、封印あるいは先送りされてしまうのであろうか。「もし消費税率が引き上げられたら」・・・この問題を、税率15%から25%と高い税率を維持しているEUの経験 - 苦い経験 - から考えてみよう。
もし税率が上がったら、「生活必需品には軽減税率を」と主張されるであろう。しかし、生野菜が生活必需品としても、冷凍野菜はどうなるのだろうか。ファストフードの店では - EUがそうであるように - 持ち帰りと店内飲食とで税率を違えるのか。麺(軽減税率になる可能性大)と具入りスープ(多分、軽減税率にはならない)のセット販売商品はどちらの税率になるのか。軽減税率は「品物」だけで、「サービス」には適用されないのか。もしそうなら、新聞などの紙媒体の情報は軽減税率適用で、同じ内容のインターネット有料配信の情報は標準税率適用か。税率の区分基準は、法律にこまごまと書き込まれるのであろうか。あるいは通達に委ねられるのか。
もし税率が上がったら、脱税のメリットも大きくなるだろう。「消費税は脱税と結びつきにくい」と考えられがちであるが、せいぜい言えるのは、「日本の消費税は税率が低いから、脱税のメリットもまた低い」ということだ。EUで2000年前後から蔓延した脱税スキーム「カルセール」(その国家損失額は、たとえばドイツでは毎年170億ユーロに上ったとされる。) ほどの規模ではないにしても、日本でも最近、自社のパート社員を新設ダミー会社に所属させ、実質は給料なのにダミー会社に対する外注費として会計処理し、それにかかる消費税を仕入税額控除とするような脱税の手口があらわれている。
この手口は、現行制度の「基準期間」や「仕入税額控除」の制度を巧みに利用している。まず、ダミー会社の資本金を1000万円未満とすることで、設立から2年間は「免税事業者」として納税義務を免除させる(消費税法12条の2)。次に、現行制度では免税事業者からの仕入れについても税額控除が認められるため(消費税法2条1項12号)、外注費にかかる消費税を仕入税額控除で取り戻す。納税していない免税事業者からの仕入れにかかる仕入税額の控除は、本来認められるべきではないが、小規模事業者への考慮として、上記のような措置がとられているのである。
消費課税の「公平」か「簡素」か、事業者の経済活動への「中立」をいかに確保するか。消費税導入時の基本理念を示した税制改革法の「公平・中立性・簡素化」および「消費に求める広く薄い負担」に立ち返って、将来的方向を見定めなければならないと思う。
(掲載日 2009年7月27日)