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成城大学法学部教授
成田 博
明治32年から長きに亘って存在していた不動産登記法(明治32年法律第24号)が平成16年に全面改正されたが(平成16年法律第123号=平成17年3月7日施行)、今回の改正は限りなく失敗に近いという印象が強い。問題は少なくとも2つある。そのひとつは「登記識別情報」であり、もうひとつは「中間省略登記」である。今回は、このうち、「中間省略登記」について書きたい。
今般の改正では、登記申請に当たって「登記原因証明情報」(不動産登記法第61条)の提出を求め、申請書副本で代えるという便法を認めない。これは、中間省略登記を容認しないことの別の表現であり、今般の不動産登記法改正の眼目のひとつは、まさにこの点にあったはずである。
しかるに、中間省略登記を認めないのは不動産市場活性化の阻害要因になるとの主張が内閣府管轄の「規制改革・民間開放推進会議」の住宅・土地ワーキンググループによってなされた。そして、中間省略登記に代替するものとして、「買主の地位の譲渡」あるいは「第三者のためにする契約」という手法を用いることの可否について法務省への照会がなされた。これに対して、法務省は、法務省民事局民事第二課長第52号通知(平成19年1月12日)によって、中間省略登記に代替する上記方策を認めるに至った。しかしながら、上記代替手段の利用は、「宅地建物取引業者は、自己の所有に属しない宅地又は建物について、自ら売主となる売買契約(予約を含む。)を締結してはならない」と規定する宅地建物取引業法第33条の2と抵触するのではないかとの疑問が出された。それなら、そこで話が終わると思いきや、平成19年7月10日、国土交通省は、「宅地建物取引業法施行規則を一部改正する省令」を公布し、宅地建物取引業法第33条の2の適用されない場合として、「当該宅地建物取引業者が買主となる売買契約その他の契約であつて当該宅地又は建物の所有権を当該宅地建物取引業者が指定する者(当該宅地建物取引業者を含む場合に限る。)に移転することを約するものを締結しているとき」なる一項目を追加した(宅地建物取引業法施行規則第15条の6第4号)。かくして、今回の不動産登記法改正の理念のひとつは根本から覆されたことになる。
そもそも、不動産登記法という国家の土地制度の根幹をなす法律に不動産市場の活性化を期待することに間違いがある。万が一、不動産登記法が不動産市場の活性化を阻害しているというのであれば、正々堂々、不動産登記法の改正を働きかけるのが筋であろう。それをせず、「宅地建物取引業法施行規則」の改正によって、その実現を目指すなど、姑息の一語に尽きる。
中間省略登記を明確に否定しようとしてなされた立法が、その「代替手段」というかたちによるにせよ、実質的には中間省略登記を肯定するという真逆の結論を非常にはっきりと導き出すについて、実に大きい力を与えてしまったというのは、なんとも皮肉なことである。法務省は、依然、中間省略登記は認められないという立場を崩していないが、その立場を貫徹しようとするなら、中間省略登記の代替手段なるものは「脱法」であると主張すべきであったし、今でも「断固」そう主張すべきなのである。
(掲載日 2009年10月13日)