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TMI総合法律事務所※1
弁理士 佐藤 俊司
先月、警察庁のウェブサイトに「偽ブランド品・海賊版の根絶に向けて!!」という報告書※2が掲載された。この報告書によると、昨年の偽ブランド品の販売形態は、インターネット・オークションが41.5%でトップとなっている。
世界に目を向けても、ネットオークションは偽ブランド品の主な販売ルートとなっており、これら偽ブランド品に悩まされるブランド権利者は、ネットオークションサイトを運営する会社を商標権侵害等を理由に欧米で次々と訴えている。
ブランド権利者は、自分のブランドを守るべく、ネットオークション上への偽ブランド品の出品に常に目を光らせなければならず、そのような偽ブランド品が次々と出品されるネットオークションサイトにも商標権侵害の責任があると考えている。一方、ネットオークションサイトも何もしていないわけではなく、ブランド権利者からの報告に基づいて偽ブランド品の削除を求めるプログラムを実施するなど、偽ブランド品対策に取り組んでおり、責任を負うべきではないと考えている。
つい先日、アメリカの第2巡回区控訴裁判所でこの点に関する初の控訴審判決※3が出された。有名宝飾ブランドであるTiffanyがネットオークションサイトを運営するeBayを商標権に基づく直接侵害と寄与侵害で訴えていた事件である。2008年の地裁判決※4では、自社の商標を取り締まるのは商標権者の責任であり、自社のウェブサイトで商標権侵害が行われているという一般的な認識だけを理由にeBayなどの会社に商標権侵害の責任を負わせることはできないとし、Tiffanyの請求を棄却していたが、控訴審もこの判決を支持した。
eBayは欧州各国でも同様にブランド権利者から訴えられており、イギリスではL’Oreal、フランスではHermès、Louis VuittonやChristian Dior、ドイツではRolex、ベルギーではLANCOMEといった有名ブランドがそれぞれ原告となってeBayを訴えている。フランスではブランド権利者に有利な判決が出ていたものの、最近ではeBayには責任はないとの判決が出ている。上記のアメリカの第2巡回区控訴裁判所の判決が出たこともあり、原則としてネットオークションサイトは偽ブランド品が出品されていることによる商標権侵害の責任を負うことはないとの流れができつつあるように思われる。
今後の各国での上級審の判断も注目されるが、これら同種の裁判における各国の裁判所の判断の違いを比較検討してみるのも面白いかもしれない。
(掲載日 2010年4月12日)