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文献番号 2019WLJCC020
金沢大学 教授
大友信秀
1.キリンをめぐる商品と商標
昭和40年から販売されていたキリンラーメンが、平成30年にキリマルラーメンへと名称を変更した。これは、キリンラーメンを製造してきたA社(愛知県)がキリンラーメンを商標登録しないまま使用してきたことにより、継続して使用することができなくなったためである。A社は、キリン株式会社がラーメンを含む商品区分第30類について有していた商標※2の不使用取消審判を求めたが、キリン株式会社のグループ会社がライセンスを受け「穀物加工品」である「きのこがゆ」にキリンの商標を取得していたことが認められ、取消しは認められなかった※3。不使用取消審判が求められたことからすると、A社とキリン株式会社との関係が友好的なものであったとは考えられず、A社が一定期間(平成10年から12年の約2年間)製造を休止していたことから先使用権を主張することもできなかった。キリンラーメンの名称変更は、このような事情によるものであった※4。しかし、仮にA社が不使用取消審判を求める前にキリン株式会社にライセンスを求めてきた場合にキリン株式会社としてこれを認めることがブランド管理上容易であったろうか。
以下のキリンコーン商標に関する事件は、有名ブランドの管理と独占が認められる範囲に関して参考になるため、紹介する。
2.キリンコーンは麒麟のコーンか?キリンさんのとうもろこしか?
3. 著名ブランドに触れる可能性がある名称を使用したい場合には?
本件では、原告が著名なビールメーカーであり、一般消費者が「キリン」という称呼に触れた際に、原告を想起してしまう可能性も意識されていたと考えるのが素直である。したがって、原告が無名の主体であれば、本件とは異なる結論になった可能性も否定できない。
著名な主体は、そのブランドを維持・管理するために、商標を取得することに注意するだけでなく、取得した商標が不使用取消しとなったり、他人の商標との関係で将来の使用範囲が限定されてしまうことにならないよう、適切な管理にも気を配っている。
本件の原告に限らず、多くの企業は常に動き続ける市場に対応するため、多角化を進めており、その結果、保有するブランドと商標も多様な商品・サービスに使用されることになる。そのため、本件のとうもろこしのみならず、本件冒頭に紹介したラーメンのように様々な商品やサービスが自身の商標と関係することとなる。
本件被告のように、著名な商標に触れる可能性のある商標を使用したい場合にはどうしたらよいのであろうか。自身の使用が先使用(商標法第32条)にあたらない場合には、ライセンスを取得する必要がある。また、著名商標の場合には、ブランド管理のため、簡単にライセンス許諾をしてもらえる可能性も低く、商品もしくはサービスの名称を変更することを考える必要もある。本件の場合でいえば、どうしてもほ乳類のキリンのイメージを使用する必要があったのであれば、キリンのイメージ(イラスト等)を前面に出して名称についても旭山動物園で実際に飼育されているキリンの種類を使用した「アミメキリンコーン」というように、結合商標の要部が「キリン」でなく「アミメキリン」になるようにしたりする工夫が必要であったと考えられる。
いずれにしても、商標の世界では、現状だけを見た性善説ではなく、将来の可能性を意識した性悪説が妥当しているということを理解しておく必要がある。
(掲載日 2019年7月22日)