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総合法政策研究会誌

 総合法政策研究会誌 第5号 2022年3月31日発行

(本誌全体をご覧になるには上のリンクをクリックしてください。)

目次


【研究会を代表して】

  1. 本号の研究会のテーマについて 小林直三(名古屋市立大学大学院 教授)(1)
    公開日:2022/3/31
  2.   

【研究論文】

  1. 相続税法9条に関する比較法研究
    ―法人を介した間接贈与を題材にして―
    中村繁隆(関西大学大学院 教授)(3)
    公開日:2022/2/18
  2. 〔要旨〕
        本論説は、持続可能な社会を支えるための税財政のあり方として、相続税・贈与税に着目し、個別論点として相続税法9条に関する問題を論じたものである。相続税法9条はその射程の不明確さから、納税者と課税当局との間で多くの訴訟がある。特に、第三者を介する贈与(低額譲渡を含む。以下、間接贈与という)には、問題が多い。間接贈与に関する学説は存在するが、その射程の不明確さを解釈論で解決することには限界があるといわざるを得ない。そこで、アメリカの連邦贈与税(Federal Gift Tax)におけるIndirect Giftsの取扱いに着目して比較法研究を行った結果、相続税法9条には、「利益を受けさせた者」と「利益を受けた者」との間に介在する法人等の組織体に関する文言がない、という課題が浮き彫りとなった。そして、その課題解決としての相続税法9条の改正の方向性は、財務省規則§25.2511-1(h)(1)第4文を参考に、かつ、わが国の事情を考慮しつつ、相続税法9条の適用除外となり得る、介在する法人等の組織体に関する文言を同条に明文化することが望ましいと考えられる。
  3.   

【研究論文 】

    1. 脱政治化に抗する政治的教養
      ―持続可能な社会を担う市民の教養として―
      中村隆志(東海大学 講師)(30)
      公開日:2022/3/1
    2. 〔要旨〕
          本論説は、持続可能な社会を担う市民の教養として、社会において効果的に活動するための知識・技能・態度を包括的に含む「政治的教養」のあり方を論じるものである。
          SDGsのような多岐にわたる公共的な課題の解決に向けて、価値観や境遇の異なる人々の間で意見や利害を調整しながら様々な取り組みをするための政治的教養(政治的リテラシー)が求められている。その一方で、実際の公共的活動に参加することに主眼を置き、能動的な市民の育成を目指すシティズンシップ教育が、既存の社会秩序や社会システムに適合的な主体を形成するだけにとどまる可能性も指摘されている。このような「脱政治化」と呼ばれる事態を防ぐ政治的教養とはどのようなものなのか、それをいかにして身につけることができるのかを検討する。
    3.   

【研究論文 】

    1. 行政機関の透明性
      ― 欧州各国の諜報機関法制を題材として ―
      小西 葉子(高知大学 助教)(48)
      公開日:2022/3/10
    2. 〔要旨〕
          本論説は、特に秘密性の高い行政機関の代表例である諜報機関を題材として、我が国における行政機関の透明性確保の手段について検討するものである。行政機関の透明性が高度に確保されているとは言い難い我が国において、持続可能な社会という観点から「効果的で、アカウンタブルで、透明性ある公的機関」を追究することの重要性を明確にした上で、我が国に応用可能な制度を検討するための手段として、欧州各国の諜報機関法制の鳥瞰的比較検討を行った。具体的には、欧州基本権機関(FRA)の2015年と2017年の調査資料をもとに、諜報機関の定義や国内外の関係性、監督・統制機関の設置状況を検討した(なお各国ごとの相違を踏まえて、我が国にとっての参照可能性を模索する観点から、GDPR設置前の状況を分析対象としている)。結論として、国際原則の国内法秩序への組み込みや、専門家集団による監督・統制を活用していくことが、我が国においても重要であることを示す。
    3.   

【研究論文 】

    1. 国際環境法における国家の意思の包摂に関する一考察
      ―パリ協定履行確保のための「緩やかな軛」-
      中村文人(防衛大学校 非常勤講師)(66)
      公開日:2022/3/10
    2. 〔要旨〕
          本稿は、国際環境法、とりわけ2015年のパリ協定において合意された法的制度が、いかに締約国の意思を包摂し、履行の確保を図ろうとしているかを検討する。
          具体的には、パリ協定は、それ以前の制度、すなわち京都議定書と異なり、短期的な視野でかつトップダウンによる履行確保ではなく、長期的な見地から各締約国からのボトムアップを中心とした仕組みを採用している。パリ協定は各締約国がそれぞれ温室効果ガスの削減目標を提出していくように、柔軟な制度設計となっている。
          パリ協定は、制裁といった手段による履行確保という観点になじまない領域である。また、気候変動の越境性ゆえに国家責任を問うことが難しいことにも注目する。そのために本稿では、パリ協定の各締約国の意思を柔軟に法的制度に包摂していく「緩やかな軛」アプローチという分析枠組みをもって、パリ協定がいかに各締約国による履行の確保を目指しているかを分析する。
    3.   


【編集後記】

  1. 編集後記 小林直三(名古屋市立大学大学院 教授)(87)
    公開日:2022/3/31
  2.   


著者の所属は発行時のものです。